ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
「今から名古屋に帰るんだけど、先生が車で伶菜と祐希を迎えに来てくれたって訳。」
『く、車で?!』
「そうよ~。言っておきますけど、私が日詠先生をここまで引っ張って来たわけじゃなくて、今日は私が付き合っただけなの~。ねっ、日詠センセ?」
「・・・・・・・・・・」
相変わらず意地悪っぽい笑みを浮かべながら小首を傾げ、そう問いかける真里に、日詠先生はただただ紅い顔して苦笑いするしかなさそうだった。
「ま、そういうコトなんで、私はこのまま帰ります♪先生!伶菜と祐希をよろしくお願いしますね♪」
真里は突然もたれていた壁から上体を起こし、生地が厚く質の良さそうなトートバックを肩にかけてそう言いながら思いっきり手を振る。
『えっ、真里~。ひとりで帰るの?ちょっと???』
「あっ、杉浦さん!!!!車で一緒に、名古屋に帰ったほうが?」
同時に重なる私と日詠先生の声。
それを聞いた真里の顔の意地悪度が最高潮に達しているように見える。
「ヤだ、先生・・・・私にそんな気を遣わないで下さい!・・・兄妹水入らずってコトで。それに私、彼氏を東京駅で待たせてるし・・・」
えっ、真里
彼氏がいるなんて、初耳だよ?
そんな話題を耳にした私は居ても立ってもいられずに彼女へ近寄った。
『えっ、真里~。彼氏なんて、いつから付き合ってるの?』
真里の彼氏事情をなんとか聞き出したい私に彼女はニヤリと笑いかけた。
「つい3時間前・・・じゃ、お二人とも気をつけて名古屋に戻って来て下さいね!ウフフ、楽しみだな・・・伶菜♪」
彼女は ”楽しみ” という意味深な言葉を残し、日詠先生に向かって軽く会釈をした後に逃げるように病室から姿を消した。