ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



「あたしってば、マシンガントークしちゃって、ごめんね。」

『いえ、日詠先生の凄さがよくわかって有難いです。私の主治医でもあるので。』

小さく舌を出してちょっぴりおどけた村上さんの表情からはその言葉通り、不安感なんて全く感じられなかった。

きっと村上さんが(たくま)しくいられるのは
一児の母親というだけでなく、日詠先生を心から信頼しているからかもしれないな

日詠先生が私のことを診てくれるようになってまだ日は浅い
けれども、村上さんの話を聴いて納得できる自分もいる


ねえ、日詠先生?
病院の屋上で私にかけてくれたあの言葉
”何度でもなんとしてでもこの子を助ける” というのは
先生なら・・・・神の手を持つ日詠先生ならきっとできてしまうんですね


私と私のお腹の中にいる妊娠13週目の新しい生命は
神の手を持つアナタに救われていたんですね


私、死ぬの・・・・もうやめる

私がいくら死のうとしても、何度でもその神の手が差し伸べられてしまうから

神の手に期待し始めてしまった私の負けです


でも、先生?

先生は患者さんを救う為にその神の手を使う時、ちゃんと医療器具を使うんでしょ?
でも私と私の中の新しい生命が救われた時には、先生の手は医療器具なんて持っていなくて

持っていたのは ”あったかさ” だけだったよ


日詠先生
あなたはいつでも、誰に対してもこうやって
その神の手を差し伸べているんですか?



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