ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
面倒くさい人物に捕まった。
本人の前でそんなことを口にしたら怒られること間違いナシだ。
「でも、まあ、夜の遊びとか、なさらないわよね~。ずっと想い焦がれてきた本命がとうとう現れちゃったんだから。」
『そんなんじゃないですよ。』
「さてさて、ミスター名古屋医大殿堂入り男がとうとう年貢を納める時が来たのか?!」
『・・年貢を納めるとか、いつの時代の人なんですか、福本さんは。本命とかなんかじゃないです。』
とりあえず否定。
今、ここで肯定とかしたものなら、この後、多分、俺はすぐには病棟へ戻らせてもらえないから。
「彼女が伶菜ちゃんだってこと、河野から聴いたわ。」
『・・俺もです。』
ついさっきのニヤニヤした顔から急に真面目な表情に変わった福本さんに俺は調子を狂わされっぱなしだ。
「穏やかじゃないわよね、ナオフミくんとしては。」
『そりゃあ、まあ。電車に飛び込もうとしていたワケですから。』
「それもそうだけど、伶菜ちゃんのお腹に子供がいるとか・・・折角、彼女、見つかったのに、ナオフミくんが年貢が納められないかもしれないなんて、切ないわね・・・」
『・・心配しているのか、面白がっているのか、どっちなんです?』
「どっちもに決まってるじゃない。伶菜ちゃんのことは心配だけど、ナオフミくんの闘う前に敗れたりな失恋は面白い。」
『・・・・・・・・・』
「ほら、そういうの、見たことないし。」
他人の失恋は面白いとか口にするこういう人が看護師長という役職を担っていてもいいのかと疑問に思う
けれども、何をやらせても完璧でスキがない仕事ぶりはこういう人でも” できる人” と認めざるを得ない