ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


彼のその言葉を聞き、みかん大福の箱に手を伸ばしたままフリーズしてしまった私の目の前で、彼はおもむろにみかん大福の箱を開けた。
そして、そっと私の大好物を指で摘み上げてニヤリと微笑んだ後、口を大きく開けた。

ああ
みかん大福

こしあんにくるまれていて
すごく、甘くてすごくジューシーな
私の、みかん大福



『あーん。』

あっ、私まで大きな口開けちゃったっ


ん・・?

やっぱり甘くて、やっぱりジューシー///


・・・・???




「・・ったく、病院に居たのに”家に着いた”なんてメールをよこすなんてコトしやがって・・・もうあんな姑息なマネするなよ。」

ちょっぴりムッとした表情を覗かせながらそう言った彼は私の口にみかん大福を運んでくれていた。


口の中は甘酸っぱい味覚がこれでもかと広がる
幸せ~!!!

コレ、季節&個数限定だから
なかなか食べられないんだよね?

わざわざ買って来てくれたのかな?


っていうか、日詠先生
いつもと変わらない感じだ

だって、またこんなに簡単に
こういう他愛のない会話できるなんて思ってなくて
顔、合わせ辛いなって・・・

だからあんなメールを返信しちゃったんだ


でも、そんなコトした私がズルイんだから、

『ふあい、ごほめえんすわいいい』

口の中の大部分をみかん大福に占領されながらも、口をもごもごさせたまま、またもやマヌケな姿で彼に謝った。


「わかればいいさ。俺も食べよ。」

彼も廊下の壁に再びもたれかかりながらみかん大福を口にし始めた。



この空気
いつもの空気だ
私がダイスキな空気、そのもの

あんなに顔を合わせ辛いと思っていたのに
このいつもの空気に再び触れられたコトによって
彼と一日でも長くこういう時間を一緒に過ごしたいと思う私は

やっぱり、ズルイですか・・・・?



< 353 / 699 >

この作品をシェア

pagetop