ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



『いい天気だよな~。』



伶菜の気配を背後でかすかに感じながら前へ進む気持ちのいい今朝。
ようやく俺達に追いついた伶菜と一緒に、祐希の初めてのひとり歩きを見届けるという嬉しい出来事を共有できたそんな今朝は


「お兄ちゃん、そろそろ出勤しないと、遅刻するよー!」

『おっ、そんな時間だったな。』

改めて兄妹という関係をお互いに認識し合った俺達の第一歩に相応しい朝になったような気がした。



ようやく自分の心の整理ができ始めたら、あとは
伶菜の背中を押してやることぐらいしかできない


『あっ、そうだ・・・一度さ、お前の結婚相手っていう人に会わせろな。』

「・・・えっ?!」

苦笑いを浮かべた伶菜。


でも、そんな困った顔をされても
彼女のこれからに関する事柄を何も把握しないまま、背中を押すわけにはいかない

妹が幸せな未来を掴むことができるか
結婚相手が彼女を幸せにしてくれる人物なのか

それを見極めることぐらいは兄としてすべきことなんだろう



「まさか、お兄ちゃん・・・“娘はやらん!出直して来い!” とか言って親父みたいなことするの?」

『まさか。親戚になるんだから、結婚する前に会っておくべきだろ?』


俺は自分のこの手で
いってらっしゃいと俺を送り出してくれる彼女を
幸せにすることができないのだから・・・

だから、せめて彼女を託す相手が
彼女を幸せにできそうな男かどうかを見届けたい

それぐらいしか
俺が彼女のためにしてやれることは
もうないのだから・・・




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