ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース52:導かれた手
【Reina's eye ケース52:導かれた手 】
産科医師であるお兄ちゃんと結婚して、彼に実家の産婦人科医院の跡継ぎになって欲しかった三宅さん。
その彼女に多額の報酬で誘われ、私とお兄ちゃんが離れ離れになるように私と偽装結婚みたいなことをしようとしていた康大クン。
彼女らの策略に嵌ってしまう一歩手前でそれを逃れた私は、これからもしばらくは一緒に居たいと思ったお兄ちゃんの手を引いた。
「・・ああ。取りあえず、手、放せ。」
それなのに、さっきまであんなに急いでいたお兄ちゃんはなぜか気後れした様子。
お兄ちゃん、急いでるみたいだったから
腕を引っ張ってみたのに・・・なんか、テンション下がる
「日詠センセっ!!!!早くしないと、伶菜の気が変わっても知らないよ♪」
もう、真里ってば、私の気が変わるってどういうこと?
もう迷うことなんかない今、気が変わるなんてことありもしないのに
「ああ、そうだな。じゃあ・・・」
真里のやや強引な指図に対して、涼しい顔してそう言ったお兄ちゃんだけど・・・・
ん?
んん??
私の手に、指に
長い指がするりと絡んでる
触れ合った部分からじんわりと熱を帯びる感覚が伝わる
それとともに胸が目まぐるしく鼓動を打つ感覚も感じるんだけど
この指、お兄ちゃんの・・だよね?!
なんで?どうして?
「引っ張るなって。見つかっちゃうだろ?あの人達に・・」
耳元をかすめた彼の囁き声。
爽やかなグレープフルーツミントの彼の香りまでもが凄く近くに感じる。
「ひゅ~、日詠センセってば、やる~♪」
「ちょっと~まだお昼よ!しかもここ、どこだと思ってるの?ナオフミくんやりすぎ!他のナース達に見られたら、あなた、大変な目に合うわよ!アタシでもフォローしきれないし。」
からかうような声を上げた真里の隣で、溜息混じりにお兄ちゃんにそう訴えた福本さん。
指が絡んでしまっている私にはもう何がなんだかわからないし、どうしていいかもわからない。
「もう見つかっちゃったんだな・・・まあ、見られてもいいし・・・いちいち説明するとか面倒なコトもなくなりそうだしね。」
相変わらず涼し気な顔でそう応えるお兄ちゃん。
「やだ、日詠先生・・・面倒なコトって・・・この人、俺の彼女です~って見せびらかして、若くてキレイなナースさん達を上手くかわすってコト?」
この人、俺の彼女です~って?!
真里ってば、何言ってるの?
っていうか、見られてもいいって
兄妹が手を繋いでる姿を見られてもいいっていうコトは
『お兄ちゃん、シスコンと思われてもいいワケ?!』
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
その場にいる誰ひとりとして言葉を発しようとはせず、暫くの間、凍りついたような空気が辺りを漂う。