一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
父親に当たる人間は大手貿易企業の御曹司で、一方俺の母親はごく普通な一般家庭の人間。
出会うはずのない2人が、どのような経緯で出会ったかは不明だが母親は身分違いの男との子供を身篭った。
それが俺だ。
俺を授かった母親は都会を離れ、子供の頃に住んでいた田舎へと移り住んだという。
母親の両親は既に他界しており、頼るものもない中で女手一つで俺を育てた。
母親の愛情を一身に受けて育った自分は、父親がいない事になんら不満もなく穏やかな幼少期を送っていた。
だから父親の存在を聞くこともなかった。
母親が時折〝暁人はお父さんにそっくりね〟と悲しさそうに呟く姿をみて、子供心に父親がいないのは死んだのだと思っていたからだ。
でも実際は違った。
それを知ったのは、昼夜働き詰めで体を悪くしてしまった母親の元に知らない男が訪ねてきた時の事だ。
その人物が何者なのか直ぐに分かった。
その人物があまりにも自分に似ていたからだ。
それからその男は何度も訪ねてきて、学校から帰ると玄関先で母親と言い合いをしているのも目撃した。
あんなに弱り切った母親を苦しめるその男が心底嫌いで、そんな男に似ている自分の事も嫌いになっていた。