一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
的場さんがそう言いかけた時、彼は私を隠すように前に出て的場さんの言葉に被せるように言葉を発した。
『紗江さんとは婚約しています。彼女の家族からも了承を得ています。』
彼がどんな表情で言っているのかは分からなかったが、的場さんは途端に顔色を変えた。
2人の間に更にピリピリとした張り詰めた空気が漂って、何が起きているのか理解が追いつかない。
何故こうなってしまったのかわからないが取り敢えず2人を引き離さなければと緊張しながら彼の裾を引っ張ると、振り返った彼はいつも通り優しい表情で微笑んだ。
『資料室はもう行かれましたか?』
「え?う、ううん。まだ、、、。」
『確か〝急ぎ〟ではなかったですか?ここは気にせずに行って下さい。ただの世間話をするだけですから。』
そう言って背中を押された。
本日は急ぎの案件なんてなかったが、自分でついてしまった嘘だ。
突き通すしかない。
「、、うん。じゃあ行くね?、、ごめんね?的場さんも失礼します。」
軽く頭を下げて2人の間を通りすぎた。
2人を残した背後からはただよらぬ雰囲気が漂っているが、振り返らずに小走りでその場を離れた。