一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
「周りからの圧力にも屈せずに、生涯2人の間に子供が産まれる事はありませんでした。そうなると次に問題になるのが〝後継者問題〟ですね。社長は血筋など関係なく実力のある人間がトップに立てば良いという考え方ですが、周りがそれを良しとはしません。奥様は早くに病を患ってお亡くなりになってしまいましたが、煩い親族もまだ重役にもおりましたし、会長もご健在。あの手この手で跡取りを作らせようとしますが、それも全て失敗に終わります。諦め掛けていたその時、、ある噂を耳にする事になります。」
「ある噂、、?」
「そうです。リゾート計画を進めていたある田舎の島に社長の幼少期にソックリな子供が居るという噂です。その子供を見た人間はこう言ったそうです。〝まるで生写しのようだった〟と。」
「まさか、、その子供って、、っ!?」
「真っ先に動いたのは社長でした。誰よりも先にその島へと向かい噂でしかないのに島中を探して回ったのです。そしてついに再会する事になります、母子に。、、、今でも忘れられません。あの社長が崩れるように膝を着き、肩を震わせながら涙を流した日の事を。、、それから社長は時間を見つけてはその島へと通われました。しかし彼女は息子を合わせずに頑なに社長を拒絶し続けました。〝息子は決して貴方の子ではない〟と。数カ月にも及ぶ攻防戦の最中でした。ある日突然、心筋梗塞で会長がこの世を去られました。その日から全ての決定権は会長から社長へと委ねられました。、、そこからは早かった。密かに彼女の息子のDNA鑑定を済ませました。重役や親族達がずっと求めていた〝唯一の後継者〟です。誰も文句を言えないように根回しをして2人を強制的に連れて帰りました。彼女もまた奥様同様に病気を患っており、直ぐに施設の整った病院へと移されました。そして彼女が連れていた息子が〝暁人さん〟です。」