一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
子供だった暁人くんの知らない所で色んな葛藤があったのだと改めて痛感させられた。
「、、それが真実だったとしても暁人が過ごした日々は地獄だったと聞いている。実際に俺が初めて暁人と出会った時は同じ子供とは思えないほどに正気は感じられなかった。」
「そうですね。結果的に暁人さんは辛い思いをさせてしまいました。しかし、、それも全て彼を守る為の事でした。あのままあの島に居たらきっと経済的にも擁護施設に行くのは時間の問題でした。それを阻止すべく、社長は動きました。暁人さんも彼の母親同様に〝愛人の子〟として連れて来られました。周りからの反応は酷いものでした。だから社長は〝あえて〟本邸ではなく別邸に連れて行ったのです。本邸には暁人さんをよく思わない人間しかいません。社長自体も仕事で家にいる時間は殆どありませんでしたから、母親が亡くなった後近くで暁人さんを守る人間はいません。だから別邸に住まわせたのです。そのお陰で暁人さんは衣食住には困らずに過ごせた筈です。」
「それが理由だったとしても父親から愛情を貰った記憶は無いと言っていた。」
「、、そうですね。社長はとても不器用な人です。親から愛情を受けずに大人になりましたから与え方も分からなかったのでしょう。そして産まれた日から子供の成長と共に徐々に親として自覚し成長していきますが社長は違います。自分の子供がいると分かった時には既に小学生に成長していましたし、突然現れた息子は自分の生き写し。まるで昔の自分を見ているような感覚だったでしょう。それに、、あれは社長の精一杯の〝愛情〟でしたよ。」
「愛情、、?」
「そうです。周りからは暁人さんを〝もっと厳しく育てて後継者に〟という声が多かった。しかし実際には行かせたのは小中共に近くの学校で名門でもない所でした。本来でしたら社長と同じように大企業の御曹司や令嬢が通う名門校でなければなりませんし、高、大も経営学が学べる所ではないといけない。しかし実際にはどうですか?ご友人である貴方は知っている筈ですよね?暁人さんは自分で高校も大学も決められました。」