一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
「そんな理由が、、、。」
「じゃあなんで社会人になって早々に海外赴任をさせた?俺には嫌がらせの様にも映った。きっと暁人にもそうだった筈だ。」
「その頃は丁度、社内で不審な動きがあり社長は日本に滞在しておりました。暁人さんを何故御社に入れなかったのかという社長へと不審感を抱く者や逆に同族会社に不満を漏らし野心を燃やす者など、社内は荒れに荒れていました。自分に悪意が向く分は構わなかったのでしょうが、暁人さんにその悪意が向く事を恐れ、海外へと赴任させました。〝海外赴任で業績を上げられたなら自由にしてやる〟などというのは建前でしかありません。真の目的は暁人さんを日本から遠ざける事とその数年という期間で社内の紛争を鎮圧させ、暁人さんが日本へと戻ってきた頃には何にも縛られない平穏な暮らしが出来る様にさせる事でした。、、きっとそれが不器用な社長なりの暁人さんへと愛情の掛け方だったのでしょう。温かい家庭環境で生きてこられたお2人には、理解が難しいかもしれません。それでもきっと社長がしてこられた事が暁人さんにとっての最善だったのだと私は思っています。実際に暁人さんには無二の親友と最愛の女性が出来ました。社長と同じような道を歩んでいたら手に入らなかったモノです。私は多くの人間が、、例え血の繋がった息子でさえ社長のやり方を否定しようとも、心から彼の生き方を尊敬し、社長の秘書でいられる事を誇りに思います。社長は本当に凄い方です。」
「、、あんたの言いたい事は分かった。確かに俺らと暁人の育った環境は違う。それでもあんたの話を聞いて愛情があったんだと理解できる。」
「私もです。愛情の掛け方を違えど、それは深い愛情だと感じました。暁人くんは愛されていた。それは紛れもない事実です。」
「っ、、ありが、、とうごさいます、、。」
私達の言葉を聞いた瞬間、芳川さんは表情を酷く歪ませ、手で顔を覆うと小さく呟いた。
小刻みに震えて、泣いている様だ。