100-3は? ~なにもかも秘密な関係~
 基はノブを握ったまま固まり、
「……今、何故、入っていいと言った?」
とうわごとのように訊いてきた。

「すみません」
と覗かれたのに、何故かあやめは謝る。

「泡風呂なので、うっかりいいかと思ってしまいました」

「いや……なにもよくはないぞ」
と扉を開けたまま、そのままの位置で、引っ込みもせず、入ってもこないで基は言った。

「そうですよね。
 でも、高倉さんは、一応、遠慮してか、いつも泡風呂のときに来られるので。

 それで、つい、泡風呂なら、オッケーかなと」

「……なにもオッケーではないぞ。
 そして、何処も遠慮してないぞ、それは」
と言う基に、

「そうですよね」
と言ったあと、二人は沈黙した。
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