100-3は? ~なにもかも秘密な関係~
 基は扉を開け、風呂場から出かけたところで、ぴたりと足を止めた。

 どうしましたっ?
と思わず、息をつめて、見つめていると、いきなり振り向いた基はかなりの勢いで戻ってきて、猫足のバスタブに手をかけた。

 あやめはなんとなく、頭突きされるっ、と思い、身構えてしまったのだが。

 バスタブに手をかけた基は、そこまでの勢いは殺し、やさしく触れるように、唇を重ねてきた。

 そのままじっとしていると、基は、あやめの濡れた腕をつかんでくる。

 その大きな手の感触に、あやめが、どきりとしたのと同じタイミングで、基は雷に触れたように手を離した。

 こちらを見ないまま、
「じゃ、じゃあ明日も早いしなお前ももう寝ろ俺ももう寝るおやすみ」
と切れ目なく早口に言って、消えていった。

 基が消えた扉から湯気が外に逃げるのをぼんやり見ながら、あやめは思っていた。

 ……専務。
 明日、休みです。




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