旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 理子とめでたく結ばれた翌日の日曜は、結婚指輪を見にふたりでジュエリーショップを訪れた。理子は俺のチョイスしたハイブランドの店を前に若干気後れしていたが、「見てみるだけでも」と促すと、緊張の面持ちで頷き、店に入った。

「どんなのがいい? 男の方はともかく、女性用のデザインは色々あるよな。ダイヤがついてるのもあるし」
「私は……ダイヤはいらないし、シンプルなのがいいな。ずっとつけていても心地よさそうな」
「そういうの、聞いてみようか」
「いや、でも、このお店では……」

 ジッとガラスのショーケースの中を見ている理子。どうやら彼女の目線は指輪そのものより、その下に小さく表示されている価格に固定されているようだ。

 ……そんなの、気にしなくていいのに。

「結婚指輪はずっとつけるんだから、いいものを買いたくないか?」
「それはそうだけど……身の丈ってものがあるでしょ? いくら隆臣が若手の有望な出世株でも、最初からそんなに贅沢したら生活が成り立たなくなっちゃう」
「あー……理子、そういえば、言い忘れてたけど」

< 84 / 151 >

この作品をシェア

pagetop