愛され秘書の結婚事情*AFTER
「ああ、そういえば」
そこでいきなり、一人の幹部が口調を変えた。
「桐矢常務。相変わらず君の秘書は噂の的だね。今度はハンサムな外国人が会いに来たそうじゃないか。今朝、僕の秘書が噂していたよ」
「ああ、私も聞いたな。おまけにその男は晶代さんの紹介だって? おいおい、母親に結婚を邪魔されて大丈夫なのか、君のところは」
「前の塚川グループの御曹司といい、君のフィアンセはかなりモテるね」
「さすがの桐矢王子も、手強いライバルが次々に登場して、内心ヒヤヒヤしているんじゃないか?」
悠臣の仕事の手腕は認めつつも、女子社員に圧倒的な人気があり、且つ一回りも年下の娘と婚約した彼に対し、少なからずやっかむ気持ちもある彼らは、ここぞとばかりに悠臣をからかいのネタにした。
今日は伯父の海堂会長も仲の良い木ノ下社長もおらず、彼を庇ってくれる人間はいなかった。
悠臣は苛立ちを隠そうともせず、「お陰様で、モテモテのフィアンセがいて、果報者ですよ僕は」と言い返した。
「いやだが、本当にいいのか?」
普段こういった話題にあまり加わらない、悠臣と年の近い藤井常務が真面目な口調で言った。
「まだ君たちの婚約は、社内では秘密だろう。僕はそれが君や会長でなく、佐々田くんの希望だと聞いたが、本当なのか」
「……それが何か」
「いや、君が納得しているのなら構わないが、あまりギリギリになって発表するよりも、そろそろ社内でも公表した方がいいんじゃないか。最近じゃあ、彼女が婚約しているというのはフェイクじゃないかって噂まで出ているそうだし」
「…………」
「噂の的になるのが嫌だそうだが、今、別のネタですでに噂の的なんだから、君との婚約だけ隠すのも不自然じゃないか?」
彼の言い分は尤もで、悠臣は返す言葉を失くし、沈黙した。
それまでからかっていた他の幹部達も、「確かにこのところ、佐々田さんの噂ばかり聞くしなぁ」と、藤井常務の意見に同意する素振りを見せた。
「すでに上層部は承知の話なんだし、人の噂も七十五日というし。早めに社内の人間に周知させておくのが、私も良いと思うけどね」
「いくら年下の婚約者が可愛いからって、あまり今から甘やかしすぎるのもどうかと思うよ? ここは年上の威厳でもって、彼女を説得すべきじゃないかな」
「…………」
口々に説教口調で諭され、悠臣は心の中で、うるさいな、と悪態をついた。
しかし彼らの助言をうるさく思いつつも、どこかで彼は、その言葉に納得もしていた。
そして彼自身、このままではいけないという、危機感も抱いていた。
そこでいきなり、一人の幹部が口調を変えた。
「桐矢常務。相変わらず君の秘書は噂の的だね。今度はハンサムな外国人が会いに来たそうじゃないか。今朝、僕の秘書が噂していたよ」
「ああ、私も聞いたな。おまけにその男は晶代さんの紹介だって? おいおい、母親に結婚を邪魔されて大丈夫なのか、君のところは」
「前の塚川グループの御曹司といい、君のフィアンセはかなりモテるね」
「さすがの桐矢王子も、手強いライバルが次々に登場して、内心ヒヤヒヤしているんじゃないか?」
悠臣の仕事の手腕は認めつつも、女子社員に圧倒的な人気があり、且つ一回りも年下の娘と婚約した彼に対し、少なからずやっかむ気持ちもある彼らは、ここぞとばかりに悠臣をからかいのネタにした。
今日は伯父の海堂会長も仲の良い木ノ下社長もおらず、彼を庇ってくれる人間はいなかった。
悠臣は苛立ちを隠そうともせず、「お陰様で、モテモテのフィアンセがいて、果報者ですよ僕は」と言い返した。
「いやだが、本当にいいのか?」
普段こういった話題にあまり加わらない、悠臣と年の近い藤井常務が真面目な口調で言った。
「まだ君たちの婚約は、社内では秘密だろう。僕はそれが君や会長でなく、佐々田くんの希望だと聞いたが、本当なのか」
「……それが何か」
「いや、君が納得しているのなら構わないが、あまりギリギリになって発表するよりも、そろそろ社内でも公表した方がいいんじゃないか。最近じゃあ、彼女が婚約しているというのはフェイクじゃないかって噂まで出ているそうだし」
「…………」
「噂の的になるのが嫌だそうだが、今、別のネタですでに噂の的なんだから、君との婚約だけ隠すのも不自然じゃないか?」
彼の言い分は尤もで、悠臣は返す言葉を失くし、沈黙した。
それまでからかっていた他の幹部達も、「確かにこのところ、佐々田さんの噂ばかり聞くしなぁ」と、藤井常務の意見に同意する素振りを見せた。
「すでに上層部は承知の話なんだし、人の噂も七十五日というし。早めに社内の人間に周知させておくのが、私も良いと思うけどね」
「いくら年下の婚約者が可愛いからって、あまり今から甘やかしすぎるのもどうかと思うよ? ここは年上の威厳でもって、彼女を説得すべきじゃないかな」
「…………」
口々に説教口調で諭され、悠臣は心の中で、うるさいな、と悪態をついた。
しかし彼らの助言をうるさく思いつつも、どこかで彼は、その言葉に納得もしていた。
そして彼自身、このままではいけないという、危機感も抱いていた。