愛され秘書の結婚事情*AFTER
<転>
午後二時。
会社に戻った悠臣は無人の常務室に入り、「あれ?」と声を上げた。
「秘書室の方かな……」
七緒の姿を求め、彼は一旦入った部屋を出て、長い廊下を右左と見た。
そこで丁度、廊下をこちらに向かって来ていた秘書の一人を見つけ、「ちょっと君」と声を掛ける。
「佐々田さんを見なかった?」
「ああ、佐々田さんなら、社員食堂にいるはずです」
「え、今頃お昼を?」
「いえ、社食の小母さんと話していました。何か深刻な顔つきで」
「え?」
「常務のご指示ではないんですか?」
「うん……」
「今から電話を掛けて、常務がお戻りだと伝えましょうか?」
「あ、いや、いいよ。大丈夫」
悠臣は軽く手を振り、「呼び止めて悪かったね」と彼女を解放すると、再び常務室に戻った。
そこで自席に座り、「一体彼女は、何の用で社食に行ったんだろう」と考える。
だが考えてもわかるはずがなく、彼は仕方なく、机の端に積まれた書類に目を通すことにした。
それから一〇分も経たない内に、七緒は部屋に戻って来た。
彼女は部屋にいる悠臣を見て、驚いた顔で「あっ……」と声を上げた。
「申し訳ありません。お戻りとは知らず、席を外しておりました」
「いや、僕もさっき戻ったばかりだから」
そう言って悠臣は、何かを見極めるように七緒の顔を見つめた。
「どこに行っていたの?」
「ええと、その……お手洗いです……」
彼女が嘘をついたことにショックを受け、悠臣は一瞬、表情を凍らせた。
「……そう」
けれど無駄に身につけた大人スキルで、彼は平静を装うことに成功した。
午後二時。
会社に戻った悠臣は無人の常務室に入り、「あれ?」と声を上げた。
「秘書室の方かな……」
七緒の姿を求め、彼は一旦入った部屋を出て、長い廊下を右左と見た。
そこで丁度、廊下をこちらに向かって来ていた秘書の一人を見つけ、「ちょっと君」と声を掛ける。
「佐々田さんを見なかった?」
「ああ、佐々田さんなら、社員食堂にいるはずです」
「え、今頃お昼を?」
「いえ、社食の小母さんと話していました。何か深刻な顔つきで」
「え?」
「常務のご指示ではないんですか?」
「うん……」
「今から電話を掛けて、常務がお戻りだと伝えましょうか?」
「あ、いや、いいよ。大丈夫」
悠臣は軽く手を振り、「呼び止めて悪かったね」と彼女を解放すると、再び常務室に戻った。
そこで自席に座り、「一体彼女は、何の用で社食に行ったんだろう」と考える。
だが考えてもわかるはずがなく、彼は仕方なく、机の端に積まれた書類に目を通すことにした。
それから一〇分も経たない内に、七緒は部屋に戻って来た。
彼女は部屋にいる悠臣を見て、驚いた顔で「あっ……」と声を上げた。
「申し訳ありません。お戻りとは知らず、席を外しておりました」
「いや、僕もさっき戻ったばかりだから」
そう言って悠臣は、何かを見極めるように七緒の顔を見つめた。
「どこに行っていたの?」
「ええと、その……お手洗いです……」
彼女が嘘をついたことにショックを受け、悠臣は一瞬、表情を凍らせた。
「……そう」
けれど無駄に身につけた大人スキルで、彼は平静を装うことに成功した。