愛され秘書の結婚事情*AFTER
そんな男の切ない心情に気付かないまま、七緒は「ああ、そうだ」と声を上げた。
「ええと、十倉先生にアドバイスをいただいて、私、決めたんです」
そこで七緒は、愛しい男にニッコリと微笑みかけた。
「もう、秘密は無しにします」
「……え」
「明日、悠臣さんと婚約したことを、会社の皆に言うつもりです。そのために今日、営業や総務のベテランの社員さんにだけ事情を打ち明けて、協力していただけるよう頼んで来ました」
「え。ベテランて……」
「ええと、営業部の吉岡さんや、総務の田畠さんや、あと経理の……」
「それって、うちのお局さん達のこと?」
ポカンとした顔で本音を口にした悠臣に、七緒はクスリと笑って、「ダメですよ、常務。そんな差別的な発言をされては」とたしなめた。
「皆さん、各部署で発言権も影響力もある方達ですから。先に事情をお伝えして、味方になっていただけたらと思ったんです。皆さん、私の婚約相手が常務と知って驚いておられましたが、快く協力を了承して下さいました。明日のお昼休みに、集めるだけ社員食堂に集めると言って下さって……」
「え。いや、ちょっと待って」
七緒の話に頭のついて行かない悠臣は、右手で相手の話を中断させて、左手を自分の額に当てた。
「ええと、つまり……。君がさっき言った、最後のワガママというのは……婚約を社内で発表したいから、その許可をくれってこと?」
「はい。実はもう、会長には今日の内にお伝えして、許可をいただいているんです」
「えっ、伯父さんには、もう言ったの!?」
「はい。お昼休みの間に、晶代さんと会長にはお電話で伝えました。お二人とも快く許して下さいました」
それと、と七緒は続けた。
「ハリーのことなんですけど……」
「えっ、……うん」
すでに驚きの余り放心状態の悠臣は、ハリーの名を聞いても上手く反応出来ずにいた。
七緒はそんな彼に恥ずかしそうな笑みを見せ、「実は彼には、私のウェディングドレスのデザインを頼んでいるんです」と、またも予想外の答えをぶつけてきた。
「へ? ドレス?」
「はい。あの方、ハリー・キング名義ではイラストの仕事をされていますが、別名義でファッションデザインも手掛けてらして。今度、女性用のドレスも新たにデザインされると聞いて、晶代さんが来日された彼に、私のドレスのデザインを依頼して下さったんです」
「母さんが、ドレスを……」
「はい。島根では神前式で和装だから、ハネムーンの時に教会式を挙げたらどうかって。その時に、悠臣さんのアメリカのお友達も招待出来るし、私にも、ウェディングドレスが着れて思い出になるわよって。私、すごく嬉しくて……。和装式もいいけれど、やっぱりウェディングドレスも着てみたかったから……」
赤い顔で正直な思いを口にする七緒を、悠臣は信じられない思いで見つめた。
「じゃあ彼が会社まで来たのは……」
「ああ。採寸は前日に済ませていたんですけど、モチーフにする花のご相談に見えたんです。好きな花はありますかって聞かれて、私、咄嗟に、悠臣さんから頂いたバラの花束を思い出して……。音速でバラですって、答えちゃいました」
そう言って、七緒は心底嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て悠臣は脱力し、そのままズルズルとソファの背に凭れた。
「ええと、十倉先生にアドバイスをいただいて、私、決めたんです」
そこで七緒は、愛しい男にニッコリと微笑みかけた。
「もう、秘密は無しにします」
「……え」
「明日、悠臣さんと婚約したことを、会社の皆に言うつもりです。そのために今日、営業や総務のベテランの社員さんにだけ事情を打ち明けて、協力していただけるよう頼んで来ました」
「え。ベテランて……」
「ええと、営業部の吉岡さんや、総務の田畠さんや、あと経理の……」
「それって、うちのお局さん達のこと?」
ポカンとした顔で本音を口にした悠臣に、七緒はクスリと笑って、「ダメですよ、常務。そんな差別的な発言をされては」とたしなめた。
「皆さん、各部署で発言権も影響力もある方達ですから。先に事情をお伝えして、味方になっていただけたらと思ったんです。皆さん、私の婚約相手が常務と知って驚いておられましたが、快く協力を了承して下さいました。明日のお昼休みに、集めるだけ社員食堂に集めると言って下さって……」
「え。いや、ちょっと待って」
七緒の話に頭のついて行かない悠臣は、右手で相手の話を中断させて、左手を自分の額に当てた。
「ええと、つまり……。君がさっき言った、最後のワガママというのは……婚約を社内で発表したいから、その許可をくれってこと?」
「はい。実はもう、会長には今日の内にお伝えして、許可をいただいているんです」
「えっ、伯父さんには、もう言ったの!?」
「はい。お昼休みの間に、晶代さんと会長にはお電話で伝えました。お二人とも快く許して下さいました」
それと、と七緒は続けた。
「ハリーのことなんですけど……」
「えっ、……うん」
すでに驚きの余り放心状態の悠臣は、ハリーの名を聞いても上手く反応出来ずにいた。
七緒はそんな彼に恥ずかしそうな笑みを見せ、「実は彼には、私のウェディングドレスのデザインを頼んでいるんです」と、またも予想外の答えをぶつけてきた。
「へ? ドレス?」
「はい。あの方、ハリー・キング名義ではイラストの仕事をされていますが、別名義でファッションデザインも手掛けてらして。今度、女性用のドレスも新たにデザインされると聞いて、晶代さんが来日された彼に、私のドレスのデザインを依頼して下さったんです」
「母さんが、ドレスを……」
「はい。島根では神前式で和装だから、ハネムーンの時に教会式を挙げたらどうかって。その時に、悠臣さんのアメリカのお友達も招待出来るし、私にも、ウェディングドレスが着れて思い出になるわよって。私、すごく嬉しくて……。和装式もいいけれど、やっぱりウェディングドレスも着てみたかったから……」
赤い顔で正直な思いを口にする七緒を、悠臣は信じられない思いで見つめた。
「じゃあ彼が会社まで来たのは……」
「ああ。採寸は前日に済ませていたんですけど、モチーフにする花のご相談に見えたんです。好きな花はありますかって聞かれて、私、咄嗟に、悠臣さんから頂いたバラの花束を思い出して……。音速でバラですって、答えちゃいました」
そう言って、七緒は心底嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て悠臣は脱力し、そのままズルズルとソファの背に凭れた。