愛され秘書の結婚事情*AFTER
「七緒……」

 彼女の言葉に感激した悠臣を、七緒は柔らかな表情で見つめた。

「そして思ったんです。ハリーの事を秘密にしたのは、晶代さんから私への試験だったんだと」

「試験? どういう意味?」

 七緒は剥き出しの肩をそっと男の胸に寄せ、自分自身に話すように言った。

「私に、あなたの妻になる覚悟があるかどうか。あなたの妻として、ふさわしい選択が出来るかどうか、のテストです」

「そんな大層なことを、あの人が考えているとは思えないけれど……」

「いいえ、間違いありません。その証拠に今日、私がお昼に、もう悠臣さんに内緒で色々するのは止めたいです。全部彼に正直に話しますって言ったら、そうね、それがいいわ、ってあっさり許して下さいました。その前に私、一度お電話しているんです。その時は、いつまで悠臣さんに内緒にしておくんですかって訊ねました。晶代さんは、いつまでかしらね、ってとぼけてらっしゃいました。あれはつまり、私から話す意志を見せるまで、って意味だったんです。絶対そうです」

「……つまり、姑に逆らってまで、夫に誠意を見せるかどうか、のテストだったってこと?」

「はい。テストされた身としては、あまり気分は良くないですけど……。でも親である晶代さんの気持ちを思うと、そういうテストをしたのも納得できます」

 視線を下に向けたまま、七緒は静かな声で言った。

「悠臣さんは前の結婚で、とても辛い思いをなさっています。自分の息子がまた結婚で傷つくことがあってはならない、そういう親心から、晶代さんは私を試したんです。私が、他人の顔色を気にしてばかりで、あなたを蔑ろにしないか。建前や世間体にこだわって、あなたを傷つけないか。それを、見極めたかったんだと思います……」

「そうかなぁ……。ただ、僕達が右往左往する様を見て、面白がってただけじゃないかと思うけど……」

「悠臣さんはそう思ってらしても、私はそうは思いません」

「まあでも、僕はどっちでもいいよ」

 取り戻した宝物を腕に抱き、悠臣は満足げに微笑んだ。

「たとえそれが母のテストだったとしても。君は僕が一番喜ぶ選択をしてくれた。それが僕は、何より嬉しい」

「はい。私も、間違えなくて良かったです」

 七緒はそう言って、甘えるように額を男の顎に擦り寄せた。

 そんな彼女を、悠臣はこの上なく幸福な笑みで見つめ、溢れる愛情のままに、その額に口づけた。
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