恋歌はクリスマスを彼と過ごしたい
 とりあえず先に誤解を解いておこう。

 恋歌はそう思い、ひとみに伝える。

「あの先輩、もしかしたら何か思い違いをしていませんか」
「思い違い?」

 ひとみが不思議そうな顔をする。

 予想通りの反応に恋歌は深くため息をついた。

 これはちゃんとはっきりさせないと。

「あのですね、私、別に村田さんのこと好きって訳じゃありませんよ」
「はい?」

 目をぱちぱちさせるひとみ。

 わぉ、何この絵に描いたような驚きっぷり。

 てか私、ずーっと誤解されていたみたい。

「先輩、私があんな男を本当に好きになると思ってるんですか?」
「だって、あんなに『好き好きビーム』を放っていたじゃない」
「そんなビーム撃てませんよ。撃てたらとっくの昔にもっとましな男を捕まえていますって」

 うん。

 そしたらこんな会社も辞めているはず。

 ああでも、ここって結構お給料いいんだよね。

 休みもちゃんととれるし。

 ……やっぱ仕事は辞めなくていいや。

 ひとみがややうろたえ気味にたずねた。

「好きじゃないならどうして村田さんにつきまとっているの?」
「つきまとうって……」

 思わず恋歌は苦笑いしてしまう。

 そんなふうにまわりから見られていたんだ。
 
 
 
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