【女の事件】とし子の悲劇~2・5世帯のなみだ
第21話
その一方で、職場と家庭の往復の生活を続けている義弟は職場と家庭の往復だけの暮らしを24年間も続けていたので、苦痛な表情をするようになっていた。

工場の敷地内にお昼休みを告げるサイレンが鳴っていたので、従業員のみなさまは作業場から休憩室に移動していた。

休憩室に着いた従業員さんたちは、青いキャリーに入っているお弁当を次々と取り出して、空いている席に座っていた。

義弟も、お弁当を取った後空いている席に座って、ひとりでお弁当を食べていた。

そんな時に、義弟のことをいつも親切にして下さっている入江さんがやって来て『一緒にお弁当を食べたいけれどいいかな?』と言うて、義弟が座っている席の向かい側の席に座った。

入江さんは、義父母の昔からの顔なじみで工場の給与担当の部署で働いていた。

入江さんは、義弟が中学を卒業してから今まで高校にも行かずに、運転免許も資格も取らずに、結婚したい時期に好きなコがいない中で、安月給でも文句ひとつ言わずに休むことなく会社のために働いてきましたので、そろそろ何とかしてあげたいと思っていた。

入江さんが、義弟に今後どのような人生を送りたいのか話を聞きたいと言うたけど、義弟はすねた口調で『そんなことを聞いてどうしたいのですか!?』と言うた。

入江さんは、義弟に優しい声で言うた。

「ひろかずさん、ひろかずさんが24年間工場と家庭の往復だけの暮らしで、高校にも行けずに、運転免許も資格も取らずに、結婚したくても出会いのチャンスが来ないままで会社のために働いてきたことを思うと、そろそろ何とかしてあげたいと思っているのだよ。」
「しほのわがままが原因で、オレは何もかもをがまんさせられたのだ!!何もかもをお兄ちゃんなのだからがまんしなさいって…そう言われてきたのですよ!!」

義弟はすねた声でこう言うたあと、入江さんにこう言うた。

「結婚をしたくても、入江さんが10年早い10年早いと言い続けていたでしょ!!そんなことばかりが続いていたから、オレは婚期を逃したのだよ!!どうしてくれるのだよ!?40が近いのだぞオレは!!」
「ひろかずさんが結婚をしたいと言った時に、10年早いと言って止めたのは悪気はなかったのだよ…30歳過ぎてからでも遅くはないのではないかと思って…あの時は、仕事をたくさん覚えてほしかったから…」
「だから止めたと言うのかよ!?みんなが好きなコと恋をして、結婚が決まっている中で、オレだけはダメだと言ったのは入江さんだろ!!」
「ひろかずさんの結婚のことについては、ご両親も心配なされているのだよ…ひろかずさんにお嫁さんが来る日はいつなのだろうかと…」
「だったら、お見合いさせろよ!!お見合いの世話をしろよ!!」
「だから、何とかしてあげると言っているのだから…そんなに怒らないでよぉ…」

入江さんは、ひと間隔空けてから義弟にこう言うた。

「ひろかずさん、今年に入ってからうちの会社も海外からの受注が増えてね、売り上げも少しだけど伸びてきたのだよ…そう言うことで、従業員さん全員にごほうびをあげようかと…」

義弟は、冷めた声で入江さんに言うた。

「また始まったよ…あんたのクソたわけたもうそうが…あんたは従業員さんたちに絵に書いたもちみたいな話をするからけむたがられるのだよ!!」
「ひろかずさん、ひろかずさんはごほうびはいらないのか?」
「だからごほうびごほうびと言うけれど、それは何なのだよ!?手当てを出すとか言っておきながら1円も手当てを出さなかったじゃないか…今ごろになってごほうびだなんて大きくズレているよ!!」
「ひろかずさんが工場に入りたての時は、イラクで戦争が発生した上に世界経済が不安定になっていたし、バブルが崩壊した時期で工場の受注が大きく落ち込んでいたのだよ!!今は工場の受注も増えたから、少し上向きになってきたから…」
「いいわけばかりを言うなよ!!ケイヒセツヤクと言っておいて、従業員さんたちにコソコソコソコソコソコソと政治家や経済団体のエライさんや香川県の県議会の議員さんたちやヤーサンの親分と昼の昼間からゴルフ三昧にコンパニオンのねーちゃんを侍(はべ)らせたりしてドーラク三昧をして、従業員さんたちのお給料を食い物にしておいて何がごほうびだよ!!オドレはどこのどこまで頭がクルクルパーなんだか…病院へ行けよバカ(ブツブツ)…」
「私のことをそんなに悪く言うのかね!?ごほうびと言うのは、会社から金一封が出るのだよ。みんなに金一封が与えられるのにひろかずさんは金一封もいらないと言うのだね。」

入江さんの言葉にキレてしまった義弟は、食べかけのお弁当を残したあと、席を立って、にらんだ目つきで入江さんを見つめていた。

「ひろかずさん!!」
「会社の言っていることは同じことばかりの繰り返しなのだよ!!いつまで従業員さんたちのお給料を食い物にしてドーラク三昧を続ける気だ!?あんたもそんな会社の役員のひとりだろ!!従業員さんたちのことを考えたいのなら、あんたの遊び代を節約しろよ!!平日ゴルフに行ったり、コンパニオンのねーちゃんにやるカネがあるのだったら、少しは従業員さんたちに回せよ!!出来ないのかよ!?バカ役員!!」

義弟は、残したお弁当の中身をゴミ箱に捨てた後、休憩室から出て行った。

その一方で、アタシとの結婚生活が破綻をしたクソッタレは、別の病院に勤務している27歳の看護婦さんにのめり込んでいたので、お休みの日ごとに密会をしていた。

サンポートの公園や屋島・レオマワールドや津田の松原などでひろむさんと看護婦さんがデートをして、帰り道に詰田川の付近のラブホに行ってしけ込んでいるところを武方さんに目撃されていた。

クソッタレは、武方さんに見られようが何であろうがおかまいなしであった。

武方さんが見ている前で堂々とキスをしていたり、イチャイチャしていたりなど…

クソッタレはどこのどこまでアタシをグロウしているのだか…

2016年7月20日のことであった。

クソッタレは、看護婦さんのカノジョから妊娠をしていることを告げられた。

クソッタレのひろむと看護婦さんのやり取りを聞いていた武方さんは、びっくりしてうろたえていた。

その日の夜のことであった。

武方さんは、アタシがバイトをしている香川県庁前のファミマにやって来て、アタシにクソッタレのひろむを止めてほしいとお願いしていた。

アタシは、陳列ケースに新しく来たお弁当をならべながら、武方さんにこう言うていた。

「武方さん!!アタシはクソッタレの家とはリエンしたのよ!!それなのにどうして他の女と一緒にラブホに入って行くところを見たとアタシに言いに来たのよ!?アタシはクソッタレの家がどないなろうと助けることはできんから…帰ってよ!!アタシは今バイト中なのよ!!」
「としこさん、こっちは困っているのだよぉ…せっかくとしこさんとひろむさんがお見合いをして結婚できたと言うのに…結婚をして半年もたたないうちに離婚をしてしまったら…困るのはこっちなのだよぉ。」
「困る困るって…一体何が困ると言うわけなのよ!?あんたもしかして、高額な成婚料を受け取っていないから困っていると言うわけなの!?何とか言いなさいよ!!」
「カネのことで困っているのではないのだよぉ…」
「ほんなら何に困ってはると言いたいのかしら!!」
「困っているのは、ひろむさんの両親の方なのだよ…としこさんが家出をしたので、家が困っていると言うているのだよ。」
「バカじゃないの!?義父母は義妹を甘やかすだけ甘やかしておいて、アタシが家の預金通帳を勝手に持ち出したとわめいて、アタシを家から追い出した…義妹がレイプされて亡くなった事件のあとになって、ワーワー騒いで『ごめんなさい!!帰ってきてください!!』だなんてズレているわよ!!」
「としこさん。」
「あのね!!アタシは今バイト中なのよ!!」
「分かってますよぉ…だけど、このままでは帰れないのだよぉ。」
「はぐいたらしい(あつかましい)わね!!このまま居座る気なのかしら!?」
「居座る気はありません。」
「だったら帰りなさいよ!!」
「分かってますよぉ…だけど…」
「アタシにどうしろと言いたいわけなのよ!?」
「どうしろって…ひろむさんの両親のお願いを受け入れてほしいのです…温かい手料理をつくってほしい…みそしるをたいてほしい…ひろかずさんに目玉焼きを焼いてほしいと泣いているのです。」
「あんたね!!いつからはぐいたらしいシュウトの肩を持つようになったのよ!?『男子チュウボウにはいるべからず』と言っておいて、都合が悪くなったら気が変わるだなんてムジュンしているわよ!!武方さん!!」
「分かってますよぉ…だけど今はしほさんが亡くなられたから家には女の子がいないのだよぉ…」

アタシはとうとう、武方さんの言葉に耐えきれなくなったので、古い方のお弁当を武方さんに差し出してからこう言うた。

「あのね!!アタシはクソッタレの家とはリエンしたので義父母のお望みには答えることはできません!!第一、誰のために手料理を作るのよ!?誰のためにみそしるを炊くのよ!!ひろかずさんに目玉焼きを焼けとよくも命令したわね!!」
「としこさん。」
「あのね!!そんなにごはんごはんと言うのならば!!古くなったお弁当をもって帰りなさいよ!!これ以上居座るのだったら、ケーサツ…ううん、アタシの元カレに頼んで今治のヤーサンの親分呼ぶから!!あんたの実家をヤーサンの事務所のダンプカーで家を家族ごとぺっちゃんこにつぶすから覚悟しときなさい!!」

アタシは、武方さんに思い切りキレた後に奥の部屋に逃げて行った。

アタシは…

何であななクソッタレの家のセガレと再婚なんかしたのだろうか…

アタシは…

結婚以外にも他に生き方があったのに…

2016年7月の最終木曜日のことであった。

アタシは、クソッタレの家から絶縁状をたたきつけられたので、クソッタレの家どころか、円座町にも行くことができなくなった。
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