【女の事件】とし子の悲劇~2・5世帯のなみだ
第27話
四国中央市へ逃げてきたアタシは、デリヘル嬢とサンクスのバイトをかけもちして、お金を稼ぐ日々を送っていた。

ちづるは、クソッタレにきつい暴力をふるわれたことが原因ですっかり心を閉ざしていた。

ちづるは、一度シェルターに保護された後、近畿地方の北部にある母子保護施設に送られた。

ちづるのダンナは、友人の家に転がり込んだ後、部屋にひきこもり状態になっていて、勤めには出なくなってしまった。

8月3日のことであった。

クソッタレは、小松島中郷町のスナックの従業員さんの女性の芹華さんのことが好きになった。

クソッタレは、芹華さんを新しいお嫁さんにすると義父母とじいやんに言うたけん、義父母とじいやんは困り果てていた。

一緒に居合わせていた久永さんは、クソッタレに『としこさんのことはどうするのだ!?』ととがめたが、クソッタレは聞く耳を持とうとせえへなんだ。

久永さんは、アタシとクソッタレのお見合いから結婚にこぎつけるまでお世話をしていたので、離婚されたら困るとあつかましい声でクソッタレ言うた。

しかし、クソッタレは『オレはとしことは結婚したくなかったのだよ!!よくもオレの結婚相手を勝手に決めたな!!』と言うて、チッと舌打ちした。

芹華さんも『真佐浩はアタシが好きなのよ…あななやさぐれ女は用済みよ…』と冷めた声でアタシのことをグロウしていた。

久永さんは、ああ情けないと言う表情になっていたけれど、クソッタレと芹華さんはヘイゼンとした様子で『ダーリン』『なあに?』とつばえていた(じゃれあっていた)。

その日の夜10時のことであった。

アタシがバイトをしているサンクスに久永がやって来て、クソッタレをどうにかしてくれとアタシに言ってきた。

アタシは、駐車場のゴミ箱の整理をしながら久永さんにこう言うた。

「あのね久永さん!!クソッタレはアタシにきつい暴力をふるっただけじゃなく、6月1日の県議会の時に女性議員さんに対してのセクハラヤジの問題から逃げ続けて謝罪する機会を逃したから、頼みのつなの政党の県連から除名された上に議員の資格であるバッジまでもなくしたと言うのに、ゼンゼン反省していないのよ!!義父母とじいやんの教育の仕方が悪いからクソッタレがセクハラ議員になったのよ!!そんなことも知らないのね!!だから上級国民は能なしのバカなのよ!!アタシはクソッタレの親族はこらえへんけん、ひとりずつ血の池地獄へ墜として(おとして)焼き殺すから!!アタシはクソッタレの家の親族から暴力を受けたのよ!!わかっとんかしら!!」
「としこさん、こっちは困っているのだよぉ…真佐浩さんがスナックの従業員さんの女性の芹華さんと再婚したからと言って、私の言うことを聞かないのだよぉ…」
「そんなんアタシにはカンケーないわよ!!あんたはアタシにそんなことを言うためにここまで来たのかしら!?言っておくけれど、アタシはクソッタレ上級国民の家とはとっくにリエンしたから!!今さら日和佐へ行けだなんてまっぴらごめんだわ!!」
「としこさん、真佐浩さんと離婚したい気持ちも分かりますが、ここはひとつ冷静になって話し合いをしたほうがいいのでは…」
「それって、アタシにクソッタレと協議しろと言うことなの!?イヤ!!アタシは日和佐には行かないわよ!!」
「そうは言っても…離婚をするのだったら、真佐浩さんとふたりで…」
「クソッタレが冷静になって話し合うことができん男だと言うことが分からないのかしら!!久永さん!!あんたはクソッタレ上級国民の男のカタを持つわけなのね!!何とか言いなさいよ!!」
「としこさん、冷静になってください…お願いですから…」
「久永さん!!アタシは思い切り怒っているのよ!!あんたね!!アタシが高松で暮らしていた時のダンナの父親からからレイプの被害を受けてボロボロに傷ついているのに、どうして再婚を勧めたりしたのかしら!?アタシは、ダンナなんぞいらんと言うたのよ!!それなのにどうしてあなないらんことをしたのかしら!?」
「どうしてって、としこさんのご両親がとしこさんに幸せになってほしいと思っていたから…」
「うるさいわね!!それはアタシの両親の単なる自己満足なのよ!!」

アタシは、久永さんに怒鳴り付けた後、大きくため息をついてからこう言うた。

「あのね久永さん、アタシはね…4度も結婚生活に失敗してボロボロに傷ついているのよ…胎内の赤ちゃんは、クソッタレがアタシを殴ったことで胎盤ハクリを起こして流産してしまったわよ…義父母とじいやんはね!!自分さえよければいい性格だから…子供の教育にはゼンゼン関心がないのよ…徳島県議会議員になったのは…会社勤めをしてもお給料が上がらない仕事をしても意味がないから…クソッタレは会社の上司に口答えばかりを繰り返して、与えられた仕事を放棄していたと思うわよ…よくそんな性格で県議会議員になれたわね!!議員になったとたんに上級国民になったからって、えらそうになったのよ!!クソッタレは選挙運動期間中に支援してくださった町民のみなさまの気持ちをヘーゼンとふみにじっていたからショウシンショウメイのクソッタレなのよ!!」
「としこさん、お願いですから…真佐浩さん…」
「はぐいたらしい(あつかましい)わね!!あんたはどこのどこまでクソッタレ上級国民の男のカタを持つわけなのよ!?あんたのこともこらえへんけん!!」
「としこさん、この通りお願いですから…真佐浩さんを…」

久永さんは、なおもアタシを言葉責めの口調で言いましたので、アタシは思い切りキレていた。

「あのね!!アタシは思い切りキレているのよ!!アタシは今度こそは女ひとりで生きて行こうと決めているのに、アタシは結婚しか方法がないと言うわけなの!?アタシはね!!鈴原の家とはとっくに絶縁にしたわよ!!それなのに、どうして話し合いをせなアカンのかしら!?あんたね!!アタシが何で怒っているのか分かっているのかしら!?ここは職場なのよ!!人が働いている職場に土足で上がり込んだ上に居座るわけなの!?居座るのならば帰んなさいよ!!帰らないとケーサツ…ううん、アタシの知人の組長呼ぶわよ!!」

アタシは、久永さんに思い切り怒鳴り付けた後、奥の部屋に逃げて行った。

アタシは…

何のために結婚をしたのだろうか…

どこへ行ったとしても…

幸せにはなれないのに…

結婚しか他にはないわけなの…

アタシは、4度も結婚生活が破綻したことが原因で、気持ちがさらにボロボロになっていた。

この時アタシは、三原の実家に戻ることを視野に入れて、女ひとりで生きて行く準備を始めていた。
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