【女の事件】とし子の悲劇~2・5世帯のなみだ
第31話
9月8日のことであった。

アタシは、伊予三島中ノ庄町の国道のバイパス沿いにあるサンクスでのバイトを終えて、駅前にあるマンスリーアパートへ歩いて帰った。

赤茶色のバッグとサンガリアのラムネチューハイの500ミリリットル缶が3本入っているレジ袋を持っているアタシは、フジ三島店の前で桂一郎さんと再会した。

桂一郎さんは、アタシに話があるから行こうと言うて、アタシを近くにあります三島神社へ連れて行った。

神社の境内にて…

アタシと桂一郎さんは、こんな会話をしていた。

「不起訴…どうして不起訴になったのよ?」
「心身喪失状態なんだよ…措置入院を命ぜられたけれど…病院に行くのがメンドウだから…知人の家を転々としていた。」
「今は…どこで暮らしていているのよ?」
「高校時代のダチの家。」
「そう…それよりも、アタシに話があると言っていたわね。」
「もちろん…真佐浩のことで…興信所を使って調査をした。」
「興信所を使った?」
「ああ。知りたいか?」
「知りたいわよ。」

桂一郎さんは、真佐浩の過去をアタシに暴露した。

「真佐浩が徳島県議会の議員になった動機は、県民のために働きたいと言ってはいたが…みーんなでたらめなんだよ…真佐浩は会社勤めがイヤだから…ハローワークへ行って職を探しても不採用の山ばかりだから…シューカツがイヤになってしまって…真佐浩は、会社勤めをしても与えられた仕事に対して口々に文句を言うし、職場の上司や目上の人に対してもショッチュウ口答えばかりしていて、勤務態度も悪いようであった…そんな男が県民のために汗を流して働くなんて…できっこないのに…安月給で事業所で働くよりも議員さんの方が大金が入るから…真佐浩の考え方は横着なんだよ!!」
「桂一郎さん、クソッタレは他にもトラブルを起こしている可能性があると考えているの?」
「当たり前だろ!!真佐浩は女とのもめ事をよぉけ抱えているからな…妊娠さわぎを含めて…」
「妊娠さわぎ?」
「そうだよ…女とのもめ事はすべて妊娠さわぎに発展している…あと、やくざに焚き付けて行った事件もよぉけ抱えているからな。」
「それよりも、アタシが知りたいのはDVのことよ!!アタシはクソッタレからシツヨウに暴力をふるわれたのよ!!今でもアタシはDVを受けた時のことが原因ですごく苦しんでいるのよ!!クソッタレは前の嫁さんにもきつい暴力をふるっていたわけなの!?」

アタシの問いに対して、桂一郎さんは『ああ、そうだよ。』と答えてから、アタシにこう言い放った。

「真佐浩のDVの前科については、興信所からの調査結果でこう書かれていたのだよ…前妻が、真佐浩から受けたDVが原因で亡くなっているのだよ…その上に、当時3歳だった連れ子の長男がお母さんを亡くしたショックで…病死になってしまったのだよ。」
「それって、クソッタレは子供にまで暴力をふるったと言うことになるわけなの?」
「その通りだよ。」
「どう言うことなのよ?アタシに分かるように説明してよ。」
「原因は分かっている…原因は…前のお嫁さんの連れ子の長男のお受験が原因だった。」
「お受験って…もしかして、アタシの前のお嫁さんって…教育ママであったと言いたいわけなの?」
「その通りだよ。超がつくほどヘドが出るはぐいたらしい教育ママだよ。学歴は愛光(私立中学高校・松山市)をトップの成績で卒業して、超一流の大学卒業で、スコットランドの大学へも交換留学で行っていて、ダントツトップの成績で博士号まで取って、大学院まで行ったのだけど…大学院の時に合コンで知り合った男と関係を持ったあげくに捨てられてしまって、胎内に小さな生命を宿していたのだよ…」
「連れ子って…もしかして…」
「言わなくてもわかるだろう!!」

桂一郎さんは、なおもアタシにこう説明した。

「としこさんの前のお嫁さんは、わが子のお受験のために大金をヤミ金から借り入れたのだよ!!そうまでして、幼稚園から大学あるいは大学院までエスカレーター式の私立の学園に行きたかったのかな…お受験は残念ながら大失敗に終わった…借り入れた大金は、金利がメチャメチャ高くて、とてもとは言えないがやりくりができない…そうなれば今度は子役タレントしかないと思ってオーディションを受ける受けないで大ゲンカになって…真佐浩は、嫁さんに対してシツヨウに暴力をふるってゴルフクラブで頭を思い切り殴って死なせてしまったのだよ…大パニックにおちいった真佐浩は、両親に助けを求めて…両親にインペイ工作をさせたのだよ。」
「不慮の事故に見せかけるために…前のお嫁さんを…」
「その通りだよ…真佐浩は、亡くなった嫁さんに死亡時に支払われる1億円の生命保険金目当てに死なせたと言っても過言ではないからな…これで分かっただろ…真佐浩の過去は。」

アタシは、桂一郎さんからの問いに対して『ええ、何となく…』と答えた。

アタシは、桂一郎さんと別れた後、駅前にあるマンスリーアパートに帰ってきた。

赤茶色のバッグとレジ袋をテーブルの上に置いた後、ざぶとんの上に座って、白のブラウスとデニムのスカートを脱いだ。

白のブラジャーとショーツ姿のアタシは、レジ袋の中からサンガリアのラムネチューハイの500ミリリットル缶を一本取り出して、フタをプシュッと空けましてゴクゴクとのんでいた。

アタシは、桂一郎さんが話していたことをもう一度思い出してみた。

クソッタレが前妻にふるったDVが原因で亡くなった後に、義父母がインペイ工作でお嫁さんの遺体を美波町の山中に遺棄したと桂一郎さんが話していた…

もし、ひとつ間違っていたら…

アタシも…

…と思うだけでも恐ろしくなっていた。

イヤ…

思い出したくないわ…

アタシはこの時、高松にいた時にひろむの父親からシツヨウにレイプされた時のことを思い出していた。

他にも、壬生川で暮らしていた時に桂一郎さんの末の弟に浴室をのぞかれた上に無理やり部屋に連れて行かれて、衣服を脱がされて犯されたことなど…

イヤ…

思い出したくもないわ!!

やめて!!

アタシは、ますます怖くなっていだので、右手で髪の毛をくしゃくしゃと思い切りかきむしっていた…

アタシは、レジ袋の中に入っているサンガリアのラムネチューハイの缶を全部取り出して、フタをプシュッと空けて一気にゴクゴクと全部のみほした。

アタシは…

この先どうやって生きて行けばよいのか…

分からなくなっていた。
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