いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
(……私に、このこと、言いに来ただけなんだ)
そっかぁ。と、脱力すると涙が少しだけ出てきてしまったのか視界が歪む。
どうして、涙なんか出るんだろう?
そう考えて、悩む暇さえ、なかった。
妙に納得してしまっていたからだ。
(そう、だよね、勘だったのかな……今もまだ深く関わり合ってるって、そんな空気感あったもんね、咲山さんと坪井くん)
ふう、っと。 大きく息を吐いて、しゃがみ込んだ。
涙を流し続けてしまっては、トイレから出られなくなってしまう。
気を紛らわせようと、落としてしまったファンデーションのケースを拾って、手を拭くために置いてあるのであろう、備え付けのペーパーに腕を伸ばして数枚手に取った。
無惨にも粉々になったファンデーションの欠片を拾い集める。
(もう泣くな、大丈夫、泣かない)
笑ってくれた。
愛おしそうに髪を撫でてくれた。
一緒にいたいと、言ってくれた。
キスが優しかった。
繋いだ手が優しかった。
こんな冴えない自分を、何度も認め続けてくれた。
居場所を照らして勇気をくれた。
もしも、咲山の言葉が真実だとしても。
真衣香と、こうなった、ここ数週間はどうだ?
(最近、連絡取り合ってなさそうな雰囲気だった……)
一筋の光を無理矢理たぐり寄せる。
(もしかしたら、私と付き合うようになってから、咲山さんとも他の……女の人とも連絡取ったり会ったりしてないのかもしれない)
こんなふうに思う真衣香を、もしも優里がこの場にいたら物凄い剣幕で怒ってくるんだろう。
『都合良く考えすぎだ』と。
なんとなく予想できてしまう。
それでも、決して正解ではなくても、真衣香はこの恋を信じると決めたんだ。
坪井を信じると決めたんだ。
(決めたんだから)
深く息を吐いて足元のゴミ箱に、使い物にならなくなったファンデーションを捨てた。
一緒に、疑う心も、捨てたつもりになって。
笑顔を作った。