いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
真衣香の方は見ず、もぞもぞとコートの襟元を触りながら気まずそうにしている。
「……そうだね。うん、つい最近も家を行き来してたとか、彼女がいても咲山さんのこと特別だったとか、多分そんな感じで」
気まずさが伝染して、真衣香も行き場のない片方の手でマフラーを触って答える。
「……はーー、だよな、そりゃそうなるよな、夏美がどう動くかなんて、わかってたのに、ごめん」
何かに呆れるように、坪井は首を振る。
そして、一呼吸、ゆっくり息を吸って、更に続けて言った。
「多分、俺、わざと、試したのかもしれない」
小さな声だった。
聞き取ったそれが正しいのかもわからない。
「え?」と聞き返した真衣香の声に坪井は答えず、逆に声を重ねるようにして問い掛けてきた。
「なぁ、どーしよ、俺ってお前の傍にいていい奴?」
言葉の意味を、尋ねられた内容を、理解出来ず。
すぐ隣、真衣香よりも随分と背の高いその人を見上げる。
不安そうに揺れる瞳が街灯に照らされてキラキラと光った。
涙、みたいだ。
何故だろう。真衣香はそう思った。
「……何の証拠もないけど、お前に付き合おうって言った日から、会ってない、咲山さんも他の人も。ビビってんだけど、自分でもさ。お前のことばっかり考えて、ほんとそんな余裕なかったんだ」
しゅん、と萎むように声が小さくなっていく。
その姿は、胸をぎゅう、と掴まれたように、痛くて、けれど愛おしく真衣香の目に映った。
「さ、咲山さんに誘われて、さっき断ってくれたんだよね。私に愛想尽かされるようなことしたくないって」
「うん」
頷いた坪井は、更に声を小さくして。まるで怒られている小さな子供のように映る、あの、遠い存在だったはずの存在が。
「喜んじゃ、嫌な女かなぁ、私。でもね、嬉しかったんだよ」
深く息を吸いみながらゆっくり言うと、はは、っと乾いた笑い声。