いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
『今日帰らないでよ』が何を意味するのか、わからないまま、乱れた呼吸を整えるように深呼吸して、苦しそうに目を閉じた坪井を見る。
やがて、真衣香の抱き締める力を緩めた坪井は静かに言った。
「一緒に帰ろ、俺の家」
「……坪井くんの、家?」
「うん、嫌? 泊まるの」
”泊まる”の単語を聞き取った真衣香は、ようやく彼の言葉の意味を理解した。
(お泊まりの!? そ、そーゆう。お誘い!?)
唐突なキスも相まって、バクバクと、いいや、それどころか破裂してしまうのではないか? そう思えるほどに心臓が高鳴っている。
「い、嫌なんかじゃ、ないよ……」
声が震えてしまって、恥ずかしい。
絶え絶えに小さく、そう答えるのがやっとな真衣香を見て、坪井は吐息まじりに笑う。
そして優しく、今度は前髪の上から真衣香の額にキスをした。
唇が離れていく瞬間、その肩越し、キラキラと星が見える。
夜って、こんなに輝きながら始まるものなのか。
そんなふうに思って、目を閉じた。
「だって、坪井くんのこと好きだから」
真衣香の『好き』に、返ってきた言葉は。
「……うん、ありがと」
『好き』ではなくて、『ありがとう』だった。
少しだけ、何かが、心のどこかでざわついた。
――そう、真衣香は、目の前の景色を信じようと、思ったから。
光に安心して目を閉じた、そのすぐ後に雲がかかり、輝きを奪うこと。
その可能性をまだ知らない。