いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
――真衣香には、この部屋に入り、全体を見渡した瞬間見えてしまったものがあった。
にも関わらず、すぐに目を背けてしまった。
緊張とは別に、ドクン、と重く心臓が跳ねたのに、気付かないフリして。
気付かれないようにして。
「や、やめないで、ほしいって言ったら軽蔑する……?」
真衣香は内心驚く。
自分でも信じられないような、甘く、ねだるような声が出た。
己の、この、喉から。
自分が自分でなくなっていくかのような、恐ろしさ。
真衣香は坪井の背後にある、ベッドや、サイドテーブルに目をやった。
見えるもの。
それは〝湧き上がってきた不安な心〟の理由であり原因だ。
(どう見ても、女の子用だよね)
ピンクの小さな鏡や、その横に置かれたピアスやネックレス。
百貨店で見かけたことがあるブランドの化粧水やクリームだったり。
ベッドに置かれたふわふわの白いクッションも、坪井が使用しているにしては、どうも可愛らしすぎるのだ。
「やめないでって、本気?」
坪井が、短く、低く、そしてゆっくりと。真衣香に問い掛けた。
こくりと頷く。
そうして、いつのまにかネクタイが外されたシャツの胸元、そこに覗く肌へ顔を寄せた。
(最後に咲山さんが、ここに来たの、いつなんだろ)
信じるとは口先だけか。情けない心の声がこだまする。
頬をすり寄せた坪井の肌の感触は、すぐに、乱暴に離されて。
ガクン、と視界が揺れる。
見慣れない天井、背中には慣れない感触のソファー。 真衣香を見下ろす、坪井の表情が苦しげに歪んでいた。
伸ばされた指先が、頬に触れて、首筋を伝う。
その手が胸元に触れたかと思えば、ほぼ同時。
性急なキスが降り、呼吸のタイミングを失ってしまった。