いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


そう言うと真衣香の声は震え出し、瞬きと一緒に涙が溢れて、零れ落ちた。
すぐ目の前にいた坪井の手にも、その水滴は落ちただろうか。
わからないが、俯く真衣香の目には確かにその手がビクリと小さく揺れて、反応した様子が映った。

ここまで人を蹴落としておいて、震える手の意味がわからない。

怒りと同時に、あの日の坪井の笑顔が真衣香の頭の中を駆け巡る。
坪井にとっての正解を返すことはできなかったのかもしれないけれど。 幸せだった、あの瞬間。
嬉しかった、優しかった。 あの日から確かに真衣香の世界はキラキラと輝きを増した。

「勘違いして、舞い上がって……こうして家にまで上がり込んで、嫌なっ、思いたくさんさせてきたのかな? ご、ごめ……」

なぜ謝ってしまうのかと、もっと怒りをぶつけられないものかと情けなく思うけれど。

(でも……)

怒りよりも大きく、とても大きく。
世界を彩ってくれた、目の前の大好きな人の心を想う。

無理を、させてたのかな。
同じ会社だったから、無下にもできないで。
冗談も通じなかった馬鹿な女に、うんざりしていたのかな。

そうして考えても考えても、ただ涙が溢れて、何も見えなくなっていく。

「……っう、や、やだ。止まんな、い。どうしよ、やだ、ごめ……」
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