いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


『うちのクラスの、1番可愛くて目立つ子いるでしょ?』

そう言って彼女の口から出た名前にピンと来ない。
興味がない相手だったからだろう。
けれども、頷く。

その声の続きを聞かなければいけないと思ったから。

『坪井くんのこと好きだったんだって』

それがどうした。

『私、知らなくて、でもその子から坪井くん奪ったってみんなに言われて』

奪ったって何。
物じゃないんだ。

『でも昨日さ、別れるって言ったら急に優しくなって無視もされなくなって……仲を取り持つよって言ったら、今までごめんねって、ありがとうって』

会話を続けながら、だんだんと頭が痛くなってきた。
脳内にまで響いてきた心臓の音を、その時、急激に込み上がってきた吐き気を。
今でも夢の中で、感じてる。

『ねえ坪井くん、その子と付き合って。そしたら私もうこんなことしなくて済むよ』

見えた手首の傷にゾッとした。

あれはいつのことだったか。互いに好きだと言い合った夕陽に染まった教室。
たった、数週間前の出来事なのに。

短期間で、心は傷つくのか。
身体も、傷つけられてしまうのか。
目の前の女の子は、滲み出る血に何を見たんだろう。

怖い。
どうしてこんなものを見せられているんだ。と、心が悲鳴をあげて。

『坪井くんに告白なんてしなきゃよかったな』

最後の言葉が、幼さ残る心を。チクリと攻撃した。



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