いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
その単語を、嘘でも声にすることが恐ろしかった。
相手を不幸にしてしまうかもしれない、なんて上等な理由があったわけではない。
ただただ、あの泣き顔や、手首の傷や、芽生えた異性への興味が渦巻く空間や。
そんなものを思い出しては気持ちが悪くなった。
(それからずっと、無意識に試し続けてる)
女同士で揉めたらどう出る?
優しく甘い彼氏が裏切ったら?
求める言葉を返さなかったら?
不安で押し潰されそうな時は?
目の前の人物の真実が望む形では、なかったら?
(ほら、どーすんの、お前らってさ)
けれど、そのどれをも。思いつく限りの全てを踏み越えて笑顔を見せ続ける人に出逢った。
好きだと笑う人に出逢った。
何の疑いも向けずに、惜しみなく優しさを降らせ。
逃げ続ける坪井とは対照的に、常に自分の弱さと向き合う人。
いつだったか吐いた弱音。
ああ、しまった。取り消したい。なんて焦る心を取り繕う前に。
恥ずかしそうに、けれど真っ直ぐに彼女は――立花真衣香は言った。
『私にいくらでも吐き出して寄りかかって、頼って』
『隠さないで全部見せてほしいの』
小さくて頼りなさげで、だけど誰よりも強い。
“全部、見せてもお前変わらず笑ってんの?“
疑おうとする心と。
縋り付きたい気持ちが、いつも交差して。
もう訳がわからなかった。
自分自身のことが、わからなくなっていった。