いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


背後で「ひぃ……! 本社に居させて下さいぃ!」と情けない川口の声が響いてきた。笹尾も川口も変わらず二課にいるというのなら、高柳の言うとおり”楽”だけはしないでいてもらいたい。

コソッと笹尾に声を掛ける。

「ねえ笹尾さん、川口さんのこと頑張って手懐けてね。まさかもう立花に迷惑かけることなんてないと思うけど」

坪井の声を聞いて、背筋を伸ばした笹尾が「わかりました」と、焦ったように答えた。その声の、不服そうだが”それを隠さなきゃ”と耐える、震えながらも強気な様子。

不服さが隠せていないのは、もちろん気に食わないけれど。笹尾は当分"真衣香絡み"に関しては、大人しくしているだろうし。その笹尾が川口をうまく押さえ込んでくれていたなら、この2人が総務を巻き込むこともなくなるだろう。

仕方ないな、こんなもんか、と。なんとか自分に及第点をつけてやった。

折り合いをつけたところで「あ、まだみんないるみたい」と、エレベーターの扉が開かれる音と同時に小野原の声が聞こえた。

振り返ると、エレベーターから降りてきた数人のうち、先頭はやはり小野原で。次に、おずおずとこちらを覗き込むように見て、出てきた立花の姿と、その腕にギュッと掴まる森野の姿が見えた。

坪井はそんな3人の様子を何度かまばたきを繰り返して、眺めた。

(小野原さんは、まあともかく。森野、いつのまに立花に懐いてんだ?)

つい先月までは、あからさまに真衣香をバカにしていたがわの人間が、川口から庇うようにガッチリとガードして歩いてくる姿は、不思議なものだった。

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