いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


――総務には、八木の目もあり用がなければなかなか足を運べない。高柳はそれをきっと分かっているし、気をかけてくれたのだけれど。
真衣香へ掛ける迷惑を別にしても、手放しには喜べない。

何故って、簡単だ。今朝のテンションで真衣香に会ってしまうと、何とか持ち直し続けてる自分の心があっけなく折れてしまいそうで少し怖いから。

はぁー、と気怠さ満点の息を吐きながら。エレベーターを降りて総務へ向かっていると、ちょうど近くのミーティングルームからお盆片手に出てきた真衣香が見えた。

……お茶でも出してやってたんだろうか。

優しく丁寧な手つきで会議室のドアを閉めて、振り返った真衣香が「……ぎゃっ!?」と、驚きの声を上げた。
続いて「つ、坪井くん何でこんなとこに……外出中じゃ」と、ぼそぼそ呟く。
あげく、目を合わせたくないと言わんばかりに、ささっと下を向かれてしまった。

(ぎゃっ!? って、待て待てマジで待って、ゴキブリ見た時の女の声じゃん……)

ちょっと顔色が悪くなってるかもしれない。顔面から、さーっと血の気が引いた感覚がする。きっと、ある意味恐怖を感じてしまっているからだ。

何を恐怖心と同列に並べたかと言えば、笹尾の一件だ。

……どう前向きに考えても。
あの時の真衣香は、タイミング的にただ動揺していただけなのだろう。見せてくれた僅かな執着、少しだけ射した希望の光。それらは幻だったようで。

「ははは、ごめん。びっくりさせた?」

(……会いたくなかった感じ、めちゃくちゃわかるんだけど)

好きな女に姿を見られた途端、悲鳴をあげられ、その上わかりやすく近付きたくないオーラを出されては……貼り付けてる笑顔も落ちていきそうだし、メンタルも粉々に割れ落ちそうだ。

「あ、ううん、ごめん。誰もいないと思ってたから……坪井くんがいた、から。ビックリして」
「そっか……」
< 319 / 493 >

この作品をシェア

pagetop