いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


(俺の名前強調して出すってことは、他の奴だったらこんな反応見せないってことだよな……うん、そう、そーゆうこと)

意識されている。しかし喜ばしいことではない。何故なら"よろしくないほうで"意識されているのだから。

「ははは……」と、また無意味に乾いた笑い声を出して、それから情けなくも言葉が続かない。

(やっべ……、え、女と気まずい空気の時って俺何話してたっけ? 思い出せないんだけどマジで?)

こんな経験はあまりなかった。誰が相手でも、とりあえず何らかの会話を続けられるし、沈黙を作ってしまうことなどこれまでなかった。
要は、どんなに凍りついた空気の中でもペースを崩さずにやっていたということ。

しかし、今……真衣香を前に、頭が真っ白だ。

「あ、なんかの書類? 持ってきてくれたの?」

真衣香は坪井の手元を見て言った。ハッと我に返った坪井は「そうそう!」と、何とかいつもどおりの陽気な声で答える。
誤魔化せているだろうか?不安がよぎる。こんな坪井の動揺は、真衣香に何の非もない、身勝手なもので。
それでも気が付いてしまっては彼女は優しいから、気に病むかもしれない。

普通に、普通に。そうやって何度も呪文のように坪井は繰り返し、努めて陽気な声で会話を続ける。

「八木さんにうちの部長が、手が空いてないからっておつかいさせられてんの。酷いよなぁ、俺も忙しいのにさ」
「おつかいって。 あはは、そっか。年末だしクリスマスだし……で、忙しいよね。営業部のみんなは特に」

(あ、笑った……え、可愛いな、やっぱ可愛い)

はにかむ程度だが真衣香が見せてくれた笑顔に激しく胸が鳴り、力んでいた身体がほぐされてゆく。
例えるなら12時間の寝溜めよりも身体の隅々まで回復できた――ような気がする。そんな感じだ。

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