いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「あ、ご、ごめん……急に、そりゃ」
「……っ、ダメじゃないよ!」
坪井はわたわたと謝り出した真衣香に、続きを言わせないとでもいうようギュッと手首を掴む。それが、少しだけ痛い。痛いのに、嬉しい。
「……ダメなわけない。お前以外の女なんて、もう絶対誰も呼ばない」
「つ、坪井くん……」
「お前が嫌じゃないなら、うちに入って、話そうよ。何かあったんでしょ、何でも聞く。お前のことで知りたくないことなんて、ひとつもないから」
坪井は優しくも決意に満ちた声で真衣香にそう言って、腰に手を当てながら掴んでいた手首をゆっくりと引っ張り上げた。
立ち上がり、目の前に坪井の顔が迫った。
ここに来るまで間も、八木と過ごしている時間にも、ずっと真衣香の頭から離れなかった目の前で見たくて仕方なかった人の顔が。
「うん……ありがとう」
それを見つめるのは、数秒が精一杯だった。下を向いて返事をしたけれど、聞こえたかどうかわからない。坪井はそんな真衣香の手を引いてゆっくりと歩きだす。
(初めて、ここに来たとき……坪井くんは優しかったけど、でも)
盲目に目の前の彼だけを信じようとする自分に対して違和感を持っていたことを思い返した。
信じるって、なんだろう。あの頃から……傷ついて泣いた時も、その後も、今もずっと考えていたけれど。
繋ぎあった手の中で暖まり、大きくなっていく、その答えが。
伝えたいことを頭の中に描いていく。
(ちゃんと、伝えよう。それを坪井くんが受け入れてくれるかはわからないけど)
今日は、あの夜みたいに流されてなどいない。手を引かれたから着いて行くんじゃない。
真衣香は自分の意思で、グッと絡める指に力を込めた。
恋の苦みさえも今は味方みたいに背中を押すから。