いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


その表情が何を意味しているのかが、今の真衣香にはわからない。けれど、ここで言葉を途切れさせてはいけない気がした。どうしても。
真衣香の手の上で頼りなく揺れた、坪井の指先に触れる。その手が逃げるように彷徨ったから、逃すまいと追いかけ、握りしめた。

追いかけっこのような触れ合い。今度は怖がらないから、逃がさないから。その一心で真衣香は問いかける。

「前に、肝心な時に疑った男だって……坪井くん自分のことを言ったよね?」
「言った……な」
「坪井くんが疑ったものって、何? 私のことを遠ざけようとしたのは、どうして?」

恋がどんなものかも理解せず、逃げてきた。そんな真衣香が、今度は頼りなく揺れる坪井の視線を追いかけている。
握りしめた坪井の人差し指は、真衣香の手を振り払ったりはしなくて。かわりに他の指で真衣香の手を包み込んでくれた。

”あの夜”には考えられなかったことだ。

坪井は、確かにあの夜、真衣香を傷つけた。
けれどそれを無駄にはしていない。
変わろうともがいてくれていた。
少しずつの変化が大きく重なり合って、今、拒絶を示さない。
例えようのない幸福感が、真衣香の心臓を鷲掴みにして離してはくれなかった。

「坪井くんに、そんな、つらそうな顔させてるのって何?」

眉を寄せて、唸るように呼吸をする。その理由が知りたい。

「……俺、は」

返ってきた声は、放心したようにぼんやりとしたもので。
察するに真衣香の"話したいこと"は、きっと彼の予想外のものだったに違いない。

「教えて坪井くん。私、全部を大好きなんて……大それた事いえない。でも、見せてくれたあなたのことを絶対に否定しない」

怖いから、逃げ出してしまうことを知った。
失いたくないからこそ認められない感情があることも、痛いほどに味わった。
だから坪井くんにもあったんでしょう?と、必死に語りかける。
上手に伝えられているとは思わないけれど。
だけど伝わって欲しいと祈るような気持ちで。
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