いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


真衣香は、とんとん、と坪井の胸のあたりを軽く叩き力を緩めてもらおうと試みるも変化はなく。
それならば……と、肩にうずくまる坪井の表情を確かめようと腕の中でもがくけれど。

「……俺さ、好きな子がいたんだ」

囁くように微かな声で坪井が声にした内容に、真衣香は動きを止め息を潜めた。
もちろんそんな真衣香の反応に気がついた坪井は「中学の頃の話だよ」と、強調させる。

「……でもごめん。これ、逆なら冷静に聞けない自信ある、俺。お前の好きだったやつの話とか」
「え?」
「嫌な気持ちにさせるなら話したくないけど、でも……」

真衣香の肩に押し付けられていた唇が、少し動いて首筋に触れる。
まるで首にキスでもされているような、緊張してもおかしくない位置に唇が触れているわけだけど。不思議とそうはならなかった。代わりに押し寄せたのは不安と愛おしさで。
真衣香は自分の頬を坪井の頭に擦り寄せ、サラサラとした心地よい感触に、目を閉じた。

(……嫌な気持ちには、なるよね、そりゃ好きな人の……自分じゃない、好きな人の話とか)

それでも……。と真衣香は閉じた瞳をさらにキツく瞑って、迷いを振り払うように唇を噛んだ。

今を逃せば、居住を定めない野良猫のように、ふらりと目の前をすり抜けていってしまうかもしれない。
今を逃せば、二度と、弱々しく彷徨う声を受け止めてあげられる機会など訪れないかもしれない。

そう思えば、答えなど悩まずとも決まっていた。

「そうだね、確かに……嫌かもしれない。私だって一応ヤキモチとか妬くんだよ」
「……うん」
「でもそれ以上に知りたい」
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