いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

恥ずかしくなって思わず声が大きくなり、握られた手を振りほどく。
そして、胸元にポン! っと拳を当てる。
つるっとしたような、そのあとにざらりと残るような。 そんなスーツの感触。
遅れて、坪井の爽やかな香り。
吸い込むと、トクン。と胸が大きく音をたてる。

「あはは、ごめん、からかった。でも口がうまいんじゃなくて本心ね。何回も言うけど」

言いながら触れていた手を取られる。

「わ!」

弾みで少し動いた身体。

前を見ると坪井は口角を片方だけ上げて、からかうように笑っていたけれど。
次の瞬間にはコロッと変化し、まるで探しものを見つけた時のようにホッとしたような。
柔らかくも不思議な笑顔を見せた。

「ほんといいよな、立花の表情。 くるくる動いてさぁ、飽きないんだけど」

それは、私のセリフだよ。 と、言いたいけれど整った顔の接近には慣れなくて。 つい口をモゴモゴとしてしまう。

「――っと、そうだ、立花」
「ん? どうしたの?」

突然声のトーンが変わった。
合わせて真衣香も声を落ち着かせる。

「俺、明日から3日くらいほとんど社内いないんだよね」
「そうなんだ、出張?」
「うん。 明日客先直行したあと、関西の方とか何ヶ所か営業所まわるらしくて」

そっか。 と、返した真衣香は今日こうして時間をくれた坪井に感謝する。
朝や、そして今この時間がないままに坪井と会えなければ金曜の夜の出来事を信じられないまま悶々と過ごしていただろう。

そして寂しくも思っただろう。

「寒いから気をつけて行ってきてね」
「えー、それだけ?」
「それだけ?」
「寂しいとか言おうよ、言ってよ、テンション上がんないな〜」

あ! と、真衣香は声をあげた。

「そ、そういうのが彼女っぽいの?」
「ん? ぽいかどうかは知らないけど。 お前に言われたかっただけ」
< 41 / 493 >

この作品をシェア

pagetop