これは恋ですか。
「お客様?」

不意に、売り場のスタッフの声がした。

あれ?
大和の様子がおかしい。
通路の真ん中で、窓の外を見て足を止めてる。

「お客様、いかがなさいました?」

声をかけるスタッフを無視して、大和は窓に歩み寄り、両手をガラスにつけて外を見始めた。


「お客様?」
「あぁ、ミキちゃん、ここはアタシが。
ミキちゃんは、あちらのお客様をお願い」

そんな大和に、ジュンさんが歩み寄る。

「大和。どうしたの?」

「この店の隣、黒い壁の服屋だったはず」

「あぁ、あの店ね。
そもそもアタシに勝負を挑むなんて、馬鹿な店だったわ。撤退して当然。
一か月くらい前にブティックからジュエリーのお店に変わったの。
なんだか、スワロスキーの派手なシャンデリアがギラギラの店よねー」

ジュンさんも、ちらっと外を見た。


「角度を調整すれば…
でも、光量が少ないかも」

あ、始まった。

外を見てぶつぶつとつぶやきながら、手が字を書くような仕草をしている。

「大和」

私がバックからメモ帳とボールペンを取り出して差し出せば、ものすごい勢いで計算を始める。

こうなるともう誰にも止められない。
さっきまでカッコいいとか言ってたお客様も、不審者と言わんばかりに遠巻きに眺めてる。

ジュンさんも呆れて肩をすくめてる。

「もぉ。営業妨害ねー。
華子ちゃんもこんなの見たらひいちゃうでしょ?」

「さっきまで『お買い得』なんておっしゃっていたのに。
まぁ、何事も『慣れ』です」

「そお?
でも、これに慣れちゃってるなら、もぉ、一緒になるしかないわよ、華子ちゃん。
さっき、紙とペンをサッと差し出した所なんて、さすが!わかってる!って感じだったわよ。
『秘書』だからなのか、大和の事を理解してるからなのか、どちらかしらねぇ」



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