これは恋ですか。
へぇ。お二人と同じ高校出身の弁護士先生なんだ。

私は名刺を改めて確認した。

ジェファーソン法律事務所、桜木いぶき先生。
女性でニューヨークの弁護士だなんて、すごい。


「俺はこれから出るから。
悪いが華子くん、久我に付き合って映画館に行ってやってくれ。

久我、さすがに着替えろよ。そんななりで華子くんと歩かせるわけには行かないぞ」

「えー。
デートじゃあるまいし、身なりなんてどうでもいいでしょ?」

久我さん、面倒くさいと、その顔にありありと書いてある。
私だって久我さんと二人で映画だなんて行きたくない。

「おまえに付き合わせるんだから、夕飯でも奢ってやれ。その格好じゃ、入れる店は少ないぞ」

そう言ってくれる専務とだったら、喜んで食事したいけれど。
あの、ホテルストリークでの一件以来、久我さんとはなるべく関わらないようにしてる。特に一緒に食事は無理。


「あ、ご飯とかはいいです。
映画館で音を聞いていればいいんですよね?
わかりました」

しかたない。これも、仕事だ。

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