これは恋ですか。
「こんなにすごいなんて。
音響に関しては、やっぱりアリオンには敵わないな。
COOGAとこれほどまでに水があけられているとは」


久我さんが落ち込んでるように見える。


「久我さん以前、アリオンエンタープライズのお仕事してましたよね?
COOGAのお仕事は、しないんですか?」

「しない。
COOGAじゃ、久我家の人間として扱われて、経営に携わることが求められる。自由に好きな研究が出来ないから」

たしかに、久我さんには経営は向いてないな。

その場でメモ帳に夢中で何かを書きはじめた。
行き交う人々が、何ごとかと視線を向ける。


「九条さんの感想も聞かせてよ」


私の感想かぁ。
研究者の久我さんが満足できるような事は言えないけど。


「臨場感がすごかったです。
久我さんは、映画の内容はどうでもいいっておっしゃっていましたけど…
正直、映像も内容もありきたりで大したことなかったのに、すぐ近くで物語が展開していくような感覚になりました。引き込まれました。
音の力ってすごいですよね」



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