これは恋ですか。
「音の力はすごい、か」


メモを取る手を止めて、久我さんがつぶやく。

あ、やっぱり研究者から見たら幼稚な感想だったか…


「…専務の言う通り、着替えて来れば良かったな」


映画の感想と、着替えに何か関係あるの?

久我さんがメモ帳から顔を上げて、私を見た。
着替えなんて面倒くさいと言ってたのに、急にどうしたんだろ。


「気に入ったよ、九条さん。
君のその素直なところ。
メシでも食べながら、もっと話を聞きたいなんて思ったのは、久しぶりだよ」

「私は、専門的な事なんてわかりませんから、話と言われても」

「映画を観るのは、専門家じゃないから。
君みたいな率直な感想は、有り難いよ」


今日の久我さんは、なんだかいつもと違う。
何というか、言葉が柔らかく感じる。
研究の事しか考えてなくて、周りには素っ気ない変わり者のはずなのに。


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