これは恋ですか。
久我さんは、ビルを見上げる。


「もう、大丈夫ですよね?
私はこれで帰ります」


声をかけてみたけれど、久我さんは考えに夢中なのか、ビルを見上げたまま、何も言わない。

このまま、帰っちゃって、大丈夫かな?
なんか、ほっとけないんだよね。


「大和、私、帰りますよ?」


「…悪くない」


やっと出てきた言葉。
だけど、これはたぶん、私の問いへの答えじゃない。


「大和?」


そう呼びかけると久我さんはゆっくりと私を見て、ニッコリと笑った。


「君に名前を呼ばれるの、悪くない。
それどころか、君の声は、耳に心地いい。

これからも俺を呼ぶ時は下の名前で頼むよ」

「…嫌ですよ。
なんか、久我さんだけ、特別みたいじゃないですか」

「あ、そうか。なるほどね。

俺、特別になりたいんだ。
九条さん、俺、どうしたら特別にしてもらえる?」

何?その質問。
特別になりたいって、どういうこと?
今でも充分、特別に気を使ってますが…

やっぱり、変わってる。

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