これは恋ですか。
脇腹を押さえて膝をついている桜木先生。
その手の隙間から血が零れ、流れて足元に血だまりを作っていた。
「いぶきっ!」
副社長は駆け寄ると、青ざめた桜木先生をぎゅっと抱きしめた。
「一条くん?一条くんまで、いぶきなの?
なんでよ…なんで」
髪を振り乱した鬼のような形相の女の人が男の人に羽交い締めにされたまま、呆然とこちらを見つめていた。
「キャアアっ!
桜木先生、桜木先生しっかりして!け、警察。警察呼ばなきゃ」
私は慌ててポケットから携帯を取り出した。
「華子さんが警察なら、オレは救急車を呼ぶ。
お嬢、しっかりしなっ!」
大将も慌てて電話に飛びついた。
「そんなに、騒がないで。
私なら大丈夫。大したキズじゃない。
玲子さん、執行猶予中なんだから、警察なんて呼ばないで」
桜木先生は気丈に言っている。
だが、傷を押さえる為に大将が貸してくれた真っ白いタオルはみるみる血で染まっていく。
「しゃべるな、いぶき。頼むからしゃべるな…血が」