俺様副社長に娶られました
◯
俺は自社事業の拡大に夢中で仕事に忙殺される間も、川原酒造のことを忘れたことは無かった。
元々若いとき取引相手であったことで父親同士仲が良く、酒蔵の状況は親父から度々聞かされていた。
直売所に北極星を買いに行くのはだいたい親父が自ら出向いていたけれど、俺が代わりに買いに行ったこともある。
沙穂は接客中だったし、俺が突然現れてたところで幼い頃にたった一度会ったことがある天川家の一人息子だと判別できないだろう。
けれど、俺はそのとき一目で美しく成長し、大人の女性になった沙穂に目を奪われた。
仕事に手一杯で結婚になど全く興味は無かったが、あのときの甘酒の記憶が蘇り、沙穂をほかの男になど渡したくないと強く思った。
川原酒造の再建は、一筋縄ではいかないと思ったが、俺は親父に必ず成功させると宣言し、全国の蔵元を見学して日本酒の製造、貯蔵方法や麹造りまで、短期間で隈なく勉強した。
川原酒造はこの地域に根ざした酒造りを主体としていたので、今後はその結びつきも大事にしつつ販路の拡大を目指すと同時に、都会から電車で気軽に行ける利便性を活かしてツアーを計画したり、うちの居酒屋でも色々な料理との相性が良いという点を売りにして行けば展望は明るいと見込んだ。
政略結婚の話が現実味を帯びてきた頃、酒処天の川で酔った沙穂が隣に居合わせた男性客に口説かれていたのを見たときは正直、気が気じゃなかった。
しかも飲めない酒を男性客の代わりに喉に流し込み、男と付き合ったこともないのに顔も知らない相手と結婚する、などと不安げに語り、連れてかれそうになったときには立場など忘れて勝手に身体が動いていた。
そのまま近くのホテルに連れ込んで、正直興奮して、途中まで理性がバカになったことは内緒だけど。
ただの政略結婚の相手としてだけではなく、もっと俺を男として印象付けたかった。
俺はこんなに狭量で、臆病で意地汚いのか、って自分でも呆れるけれど。
俺は沙穂を手に入れるために、必死だった。
これまでの出来事を感慨深く思い返しながら着替えて出かける準備をしていると、携帯が着信を報せた。秘書の実沢だ。
『__副社長、お休みのところすみません』
「ああ」
携帯を耳にあて、ほとんど溜め息状態で返事をする。
俺は自社事業の拡大に夢中で仕事に忙殺される間も、川原酒造のことを忘れたことは無かった。
元々若いとき取引相手であったことで父親同士仲が良く、酒蔵の状況は親父から度々聞かされていた。
直売所に北極星を買いに行くのはだいたい親父が自ら出向いていたけれど、俺が代わりに買いに行ったこともある。
沙穂は接客中だったし、俺が突然現れてたところで幼い頃にたった一度会ったことがある天川家の一人息子だと判別できないだろう。
けれど、俺はそのとき一目で美しく成長し、大人の女性になった沙穂に目を奪われた。
仕事に手一杯で結婚になど全く興味は無かったが、あのときの甘酒の記憶が蘇り、沙穂をほかの男になど渡したくないと強く思った。
川原酒造の再建は、一筋縄ではいかないと思ったが、俺は親父に必ず成功させると宣言し、全国の蔵元を見学して日本酒の製造、貯蔵方法や麹造りまで、短期間で隈なく勉強した。
川原酒造はこの地域に根ざした酒造りを主体としていたので、今後はその結びつきも大事にしつつ販路の拡大を目指すと同時に、都会から電車で気軽に行ける利便性を活かしてツアーを計画したり、うちの居酒屋でも色々な料理との相性が良いという点を売りにして行けば展望は明るいと見込んだ。
政略結婚の話が現実味を帯びてきた頃、酒処天の川で酔った沙穂が隣に居合わせた男性客に口説かれていたのを見たときは正直、気が気じゃなかった。
しかも飲めない酒を男性客の代わりに喉に流し込み、男と付き合ったこともないのに顔も知らない相手と結婚する、などと不安げに語り、連れてかれそうになったときには立場など忘れて勝手に身体が動いていた。
そのまま近くのホテルに連れ込んで、正直興奮して、途中まで理性がバカになったことは内緒だけど。
ただの政略結婚の相手としてだけではなく、もっと俺を男として印象付けたかった。
俺はこんなに狭量で、臆病で意地汚いのか、って自分でも呆れるけれど。
俺は沙穂を手に入れるために、必死だった。
これまでの出来事を感慨深く思い返しながら着替えて出かける準備をしていると、携帯が着信を報せた。秘書の実沢だ。
『__副社長、お休みのところすみません』
「ああ」
携帯を耳にあて、ほとんど溜め息状態で返事をする。