俺様副社長に娶られました
「あっ、電話中でしたか……! すみません!」


……実沢の、あの目を細めたニヤニヤした顔が目に浮かぶ。


『副社長、今日は奥様とお出かけだったんですね』
「とにかく、全部まとめて週明けにしてくれ」
『かしこまりました! 楽しんで来てくださいね!』


余計なお世話だ、と思いながら俺は電話を切った。


「創平さん、すみません! 大声を出してしまって」
「いや、全然大した用じゃない。準備できたから、行くか」


沙穂は食事をするダイニングテーブルが欲しいのだそうだ。
俺は沙穂が越して来るまで、家で食事をすることがほぼ無かったので、そんなものが必要だなんて考えたこともなかったけれど、反対する理由も無い。

ただ、沙穂が見に行きたがっっているインテリアショップはうちのカフェバーを出店しているあの商業ビルにあるとかで、俺は物凄く嫌な予感がしていた。


「__沙穂ちゃん!」


アーケード通りを歩いているときだった。


「た、泰生くん」


悪い虫にばったり会った。
こんなに簡単に会うなんて、せっかく沙穂が仕事を辞めてここガキに関わらないよう仕向けたのに。意味ない。


「バイト?」
「うん、これから」


沙穂は爽やかな笑顔を相手に向けている。
……別にムスッとしろとは言わないけど。なんでそんないちいち可愛い顔するんだ、面白くない。


「あ……」


沙穂にばかり目がいっていた相手が、隣に立つ俺の存在にさも今気づきました、って言うようなわざとらしい調子で、取ってつけたように一礼した。


「沙穂ちゃん、今日から苺のラテやってるよ」
「え、そうなの⁉」


バイトしてるとかいうコーヒーショップには、次々に若い女性たちがまるで吸い込まれるように入って行く。
その光景を見た沙穂は、興奮気味に両目をパッと明るく見開いた。
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