婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 半信半疑になりながら「本当にいいんですか?」と、琥珀色の瞳をジッと見つめる。

 こうして長い時間彼の綺麗な顔を見つめるのは久しぶりな気がした。

 新さんは「ああ」と短く答える。

 それなら……。

「できる限りでいいので、会いにきてほしいです。新さんの顔を見たらすごく安心します」

 会いに来てほしい、だけで止めるつもりだったのに、声に出したら本音までこぼれ落ちた。

 新さんはなにかを探るような目で、私の顔を穴が空きそうなほど凝視する。

 そんなに見なくてもいいのに……。

 気恥ずかしくて目を合わせていられない。すっと視線を逸らして、ゆっくりとしずくが落ちる点滴を見つめた。

「面会時間は二十時半までだから、ギリギリになるかもしれないけど毎日来るようにする」

「そんな、できる限りでいいですよ。これ以上迷惑かけられません」

「俺が茉莉子の顔を毎日見たいんだよ」

 素っ気ない言い方ではあったけれど表情はとても真剣で、本心で言っているように見えた。

 すごく嬉しいのに、自分の意思とは関係なく優しくされると胸の痛みは増す。

「……ありがとうございます」

 微妙な顔になっている自覚があるので、手で目元を覆ってうつむいた。
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