婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「会社のために政略結婚したけれど、愛のない政略結婚だからこそ、愛人がいてもおかしくはないと言いたいのでしょう?」

「ちょっと待て。誰もそんなふうに言っていない」

「だって」

「うるさい」

 冷ややかな声音で私を凍りつかせ、流れるような動きで唇を塞いだ。

 されるがままになっている私からゆっくりと唇をどけて、かさついた頬を手のひらで包み込む。

「美麗を好きだと思ったことも、女の魅力を感じたこともない。向こうが一方的に俺の女にしてほしいと迫ってくるだけだ」

 頭が混乱している。なにが真実でなにが嘘なのか。

「関係を持ったことは?」

「あるわけないだろう」

 うんざりした様子で吐き捨てて荒っぽい所作で椅子に座った。嘘を言っているようには見えない。

 よかった。信じていいんだよね。

 ふたりに身体の関係があったのかどうか、なんだかんだそこが一番引っかかっていた。

 もちろん過去にお付き合いをしていた女性がいて当然だが、想像でしかない過去の女性像と、形となって実際に目の前に現れるのとでは大違いだから。

 この先ずっと、白石さんの女性らしい素敵な身体つきと貧相な自分の身体を比べては劣等感に苛まれていたかもしれない。
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