婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 病院で事情を説明するとすぐに検査が行われた。

「高位破水だね。子宮の高い位置の膜が破れて、少しずつ羊水が流れてくるんだけど、感染症の恐れもあるからこのまま入院してね。様子を見て陣痛がこないのなら陣痛促進剤を使うからね」

 何度もお世話になっている年配の先生から説明を受け、病室へと案内されているうちにお腹になんともいえない痛みを感じて額に嫌な汗が滲んだ。

 どうやら陣痛が始まったらしい。しかし看護師さんいわくまだ子宮口が一センチしか開いておらず、八センチくらい開いてやっと分娩室へ移動するとか。

 このまま部屋で様子をみましょうと言われ、お母さんとふたりきりにされる。

「新くんから連絡はきた?」

 お腹をさすりながら首を横に振る。

「会議も多いし、メールすら見ていないかも」

「そう。まあ、まだ時間はかかるだろうし大丈夫ね」

 新さんは立ち合い出産を希望していて、仕事でよほどの事態が起きない限り病院へ駆けつけることになっている。

 赤ちゃんの位置もまだまだ高いので、陣痛を促すため、お腹の痛みに耐えながら病院の階段を昇り降りしたり、渡されたバランスボールに座って身体を上下に動かしたりした。

 それでも陣痛は弱いままで赤ちゃんが産まれてくる気配はまったくない。休憩がてらお茶を飲んでいるところに新さんから電話がかかってきた。
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