婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「そうなのか。じゃあ、期待している」

「任せてください。そのためにも好き嫌いを教えてくださいね」

「仕事関連でどうしても外食が多いから、家では家庭的なものが食べたい。嫌いなものは特にないけど、甘いのはあえて口にはしない」

 ふむふむ、と頷く。

「確かにデザートをよく残していましたね」

「果物の甘さはいいんだけどな」

「なるほど。だから柚子酒も大丈夫なんですね?」

「いや、それは飲まない」

「え? じゃあこれは……」

 半分ほど中身が減ったグラスを持って首を傾げる。

「茉莉子が好きそうかなって」

 私のために事前に用意しておいてくれたの?

 思いもよらない気遣いに呆気に取られた後、じわじわと嬉しい気持ちが胸に広がっていく。

「もしかして他にもあったりします?」

「キッチンの棚に幾つか入っている。後で見てみるといい」

「ありがとうございます。嬉しいです」

 元々新さんがひとりで暮らしていた場所だし、そこへ私も住む形になって嫌な気分になっているのではないかと不安があったけれど、ルームウェアもお酒も私を歓迎している証だ。
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