婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 白色とグレーで揃えられた寝具を目にしたら無駄に緊張して、これから眠りにつくというのに背筋がピンッと伸びた。

 右か左どっちで寝ればいいのか迷った挙句、ドアから離れている方にした。

 布団の中に潜り込むとひんやりとしたシーツの感触にぶるっと身体を震わせる。日中は暖かく
なってきたといっても夜はまだ冷え込む日があったりする。

 ドアを背にして横向きになったのだが、ベッドが変わったせいなのか、はたまた結婚式の興奮がさめやらないのか、瞼を閉じても眠気が一向にやってこない。

 まいったな。ひとりでいるうちに寝てしまいたいのに。

 そうこうしているうちに寝室のドアがカチャリと開く音がして、隙間から明かりが差し込んできた。

 わっ。来ちゃった。

 ベッドが軋み布と布が擦れ合う音がして、すぐそばに人の気配を感じた。丸くなったまま息を潜めていたが、寝息はいつまでもたっても聞こえてこない。

 眠ったのかどうかが気になって、なるべく音を立てないようにゆっくりと身体を回転させる。

 すると暗闇の中で開かれている瞳と視線がぶつかって悲鳴を上げそうになった。

 ……びっくりした。

 心臓がドッドッと飛び跳ねながら鳴っている。
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