【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
イチゴとぶどう、どっちも好きな味。
あんなことが起きたから葵くんなりに気にかけて言ってくれたことなのかな……。
とても食べる気にはなれないけれど、腐ったように部屋で塞ぎ込んでいたら、もっと気にさせてしまうかもしれない。
私はイチゴのゼリーをありがたく頂くことにした。
甘酸っぱい味が口に広がる。
ふと蘇った体育倉庫での出来事に、喉の奥が焼けるように熱くなった。
こびりついて離れない。
きっとずっと消えることなんてないだろう。
体操着姿のままだった私はとりあえず着替えようと思い部屋に入る。
「……あ、葵くん」
着替えを終え境界線であるふすまの扉を開けると、シャワーから戻ってきていた葵くんが立っていた。